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シオンの誘い

途中からラザンの補足も入り、二人によって三十年前の出来事が解き明かされる。

一連聞き終えたシノレとしては、何かもう圧倒される心地だった。


世の中には、凄まじい人間がいるものだ。

色んな人間を見てきたつもりだが、こんな苦境で我を失わず、冷然と正解を選び続けられる人間がどれほどいることか。


「……あ、ラザン、もう大丈夫です。

話を聞かせてくれてありがとう。

貴重な昼休みにすみません」


「承知致しました、またいつなりと。

……若様、訓練も結構ですが、座学の大切さもそれに劣りはしませんよ」


「もう……分かってますよ。概略はちゃんと言えたでしょう?」


シノレが感慨に耽っている間に、ユミルがラザンを下がらせた。

喋り疲れたらしく、一度伸びをしてから飲み物を取りに行く。

戻ってきてから、シノレを見て首を傾げた。


「……シノレはこういうことに興味がありますか?」


「そうですね、はい……何だか聞いていて、胸が騒いだというか、もっと知ってみたいような気持ちになりました」


「興味があるなら、今度一緒に勉強しましょうよ。

二人でやれば楽しいですよ!」


彼は笑顔になって、新たに注いできた牛乳を飲み干す。

一通り話し終えて、気の抜けたような顔をしている。

食事にも満足したようだ。


幸せそうに息をつき、「ところで」と話を変えてきた。


「午後はどうしますか?

さっきと同じ場所でまた稽古しましょうか、それとも場所を変えますか?

馬を駆るのも楽しそうですし、まだ何か知りたいのならこの勢いのまま勉強にあてても良いですし!!」


「そう、ですね。どれでも良いですけれど……」


「……では選択肢のお一つとして。

良ければ私にお付き合い下さいませんか?」


個人的に少し調べたいことがあって、返す答えに迷う。

そこに、涼やかな声が割って入る。


口を挟んだのは長い金髪を流した、清廉な女騎士だった。

ユミルは彼女を見て笑みを浮かべ、「シオン!」と呼びかける。


「どうしたんですか?何かありました?」


「……こんにちは」


「はい、お二人とも。今日もお変わりなく、お元気そうで何よりです」


突如現れた彼女の姿に、シノレは内心訝しんだ。

オルシーラ姫の護衛の任はどうしたのか。

休みの日は稽古に参加してくるが、今日はそうではなかったはずだ。

一体何の用だろうか。


「実は少しご相談したいことがあって……ユミル様、それにシノレ様も、聞いて下さるでしょうか?」


「それは良いですけどその呼び方は止めて下さい。

使徒家の方にそう呼ばれるのはかなり色々具合が悪いので」


「おや、そうですか?

では、シノレ君と呼びますね。

それはそうと……どうでしょう、これから少し城下に出かけませんか?

オルシーラ姫からご要望がありまして、これから街をご案内するのですが、万全を期すため、もう少し人手が欲しいのです」


それにシノレより先に答えたのはユミルだった。


「良いですね!行きましょうよシノレ!」


と声を弾ませる。

先程見せた疲れはどこへやら、ばねのある動きで立ち上がった彼の笑顔に促され、シノレも立ち上がったのだった。


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