教育係との再会
ここにいる者たちはセヴレイルの傘下だ。
異教徒の根城であるロスフィークの敗北を願うのは当然としても、サフォリアが勝利するのにも思うところがあるのだろう。そこまでは分かったのだが。
「ユミル様」
「はい、何です?」
とっくに実家の繋がりで聞かされていたのだろう。
全く反応せず食事に没頭していたユミルがそこで初めて顔を上げた。
今は、おまけに渡された飴がけのパンを頬張っている。
シノレも口休めに手を伸ばした。齧ると柔らかい生地の食感と、甘い香りが広がる。
中には蜜煮にしたベリーと、何かぷちぷちとした種子が底に敷いてあった。
「……最近よく聞く、異教徒との戦いですが。実際はどのようなものだったのですか?」
「うーん……逆に聞きますが、シノレは異教徒との戦いについて、どのくらいまで知っているんですか?」
「まあ……三十年前のざっとした経緯くらいは。
北から魔獣、西から楽団、南から異教徒に攻め込まれて、先代猊下がそれらを打ち払ったのでしょう?
ですが、詳しい成り行きはあまり分からなくて」
いや化け物か。感想はそれに尽きる。
だがその詳細については、よく覚えていない。
教わったかどうかさえ不確かだ。
あの頃は本当に何もかもが目まぐるしくて、最低限のことを叩き込まれるばかりで、細かいことは記憶から溢れていったのだ。
「知識面は、とにかく突貫の詰め込みだったもので……お恥ずかしいのですが」
「恥ずかしくなんかありませんよ!
僕だってしょっちゅう忘れますし、何なら授業中寝ていますし!」
笑顔で言うことではないと思う。
「僕もうろ覚えなので、詳しい人を呼びましょう!」と腰を浮かせ、手を振った。
すぐさま従者らしき者が近寄ってきて、用命を待って控える。
「若様、何か?」
「少し話を聞きたいので!
先代猊下の南方遠征に参加した者を、誰か呼んできてくれませんか?
当時に詳しい人が良いですね」
「承知致しました。少々お待ち下さいませ」
即座にそう返した従者は現れた時同様音もなく下がり、そして目当ての人物は数分後にやってきた。
シノレにとって、それは思わぬ相手との再会だった。
もう随分昔のことのように思える、エレラフでの出来事が蘇る。
一瞬シノレに目を留めてから、ラザンは恭しく頭を下げた。




