伝令
発端は、一月前のことだった。
エルフェスで体を回復させていた聖者のもとに、シルバエルからの使者がやって来た。
「聖者様、お懐かしゅうございます。
お体の方は大事ありませんか」
「聖者様、御機嫌よう!お会いできて嬉しいです!」
如何にも清廉な白基調の武装が、礼の流れに従って揺れる。
金髪の似通った面差しの女性と少年は、これまたよく似たきらきらした表情で聖者を見つめた。
「…………お二方とも、わざわざありがとうございます。
私の方こそ、またお会いできましたこと、嬉しく思います」
聖者もそれに、弱く微笑み返した。
金髪の女騎士はそれに姿勢を正して、すらすらと淀みない口調で経緯を語る。
最近になって持ちかけられた大公との同盟、ひいてはその条件についてだった。
聖者もシノレも予め概要は聞いていたので、特に聞き返すこともせず耳を傾けた。
「……これらの話には色々と聖都で議論もございましたが、結論として申し出を受諾するとの猊下のご決定が下りました。
つきましては、このままレイグ様の元にお移り頂けないかと……
私どもは、その伝令と警備を仰せつかりました。
如何でしょうか?
もしもお体がまだ万全ではないとなれば、その旨報告してご判断を仰ぎますが」
「……いえ、はい、分かりました。
全て猊下の仰せのままに。私は大丈夫です。
いつでも出立できますので、どうかお気遣いなく」
そんなやり取りで、聖者の移動は決められた。
その後もお祭りだの歓待だの色々経て、何だかんだ今に至る。




