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開かずの櫃の中身

 それから暫くして、忙しない気配とともに使用人を引き連れた城主がやって来る。

使用人たちとしても、どうしたものか対応に迷ったのだろう。

取り敢えずシノレと聖者はその場に止め置かれ、すぐにウィザールが呼びに行かれた。


「聖者様、お目覚めになったのですか。

それは何より、ですが……一体どうしたことですか?これは」

「……ウィザール様、大変申し訳ございません」


 城主に聖者はまず、深々と頭を下げる。

それに慌てたように顔を上げるよう促したウィザールは、続けて聖者とシノレと剣を訝しげに見比べた。


「使用人の説明が要領を得ず、私も事情が呑み込みきれていないのですが……

シノレがその剣を、宝物庫から持ち出したということで宜しいのですかな?」

「……概ね、その通りです。

更に図々しくお願い致しますが、どうかこの剣をお譲り下さいませ」

「いえ、それは……聖者様の仰せとあらば。

寧ろ光栄と申し上げたいところでございますが、その、シノレはどうやって宝物庫に入ったのでしょう?

あそこの扉は常に、厳重に施錠してあるのですが」

「私がシノレに指示し、開けさせました。

その方法は説明しかねますが、今後このようなことは起こりませんので、どうかご容赦下さい」

「…………」


 端で聞いているシノレも、割と無理筋だと思った。

得体のしれない方法で泥棒して、けれどその詳細は明かせず、再発はないから見逃せなどと。

楽団で言ったら袋叩きでは済まないふざけた言い草だ。


 しかしそんな馬鹿げた言い分も、聖者が言えば通ってしまうのが教団という場所である。


「ええ、無論。

天より降臨なされた聖者様は、我ら教徒に何ら遠慮などなさる必要はないのですよ。

寧ろこの上ない光栄でございます。

……しかし、その剣は一体?

そのようなものを収蔵した覚えはありませんが」

「……以前お見せ頂いた、開かずの櫃の中身がこれです。

ウィザール様、これから起こること、そしてシノレの行ったことには、私が全ての責任を負います。

猊下にもそう申し上げます。

どうか、それを制止なさらないで下さい」

「それは、シノレが勇者と、そう仰る故のことなのでしょうか」


 聖者はそれに一拍の間を置いてから、真っ直ぐに見つめ返した。


「その通りです」


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