魔晶銀の価値
銀。それは今の時代で最も価値が高いとされる金属である。
誰もが認める圧倒的な価値を持ち、どこにおいてもその社会の経済基盤に直結する。
そのため、銀を産出する銀山は全てが厳重に管理され、盗掘者は問答無用で処刑される。
その銀で作られた銀貨は金貨の上に位置し、民間で流通することも殆どない。
それこそ賠償金や身代金などといった、一握りの大富豪や四勢力間でのやり取りにのみ使われる通貨だ。
純銀製の食器など、贅の極みと言って良い代物で――このエルフェスの城では、当然の如く取り入れられている。
……まあ、だが、とにかく。
銀なんてものは、大半の人間は一生目にすることもないだろうもので、殆どお伽噺の存在の域である。
……シノレにとっても、生涯無縁の代物であるはずだった。
まして、魔晶銀など。
護符の中央に埋まった小さな石を見つめる。
大きさは豆粒程度しかないが、魔晶銀というだけで他の魔晶石とは一線を画するのだ。
果たしてこれは天然物か、養殖物か。
……天然自然の魔晶銀は非常に質が高く、悪しき方向に向ければ濁り、幸運の方向に向ければ輝き、それ単体でも守りの効果を発揮すると言われている。
しかしどちらにせよ、これが一つあれば、そこそこの術具を数年動かし続けることも可能だろう。
魔晶石の最大の価値――それこそが、術具を起動させる鍵としてのものだ。
旧時代の遺物である術具は、所有していることそのものが力となる。
楽団では特にそうだった。
有名どころでは「天蓋」「銀輪」「虚月」「緞帳」などで――所有者は畏怖を込めて、それらの呼び名で呼ばれることもあるが――しかしそれらとて、魔晶石という燃料なしではただの古びた遺物だ。
彼らは彼らの権威を維持するためにも、魔晶石を補給し続ける必要があり、そのためであれば大枚を払う。
魔晶銀であれば尚の事。
魔晶銀は魔晶石の中でも、際立って燃料としての質が高く、持ちが良い。
だからこそものによっては、天文学的値うちをつけられ重宝される。
魔獣を忌避し、旧時代の遺物を退廃的と批判する教団においてすら、銀や魔晶銀の価値は認められているのだ。
楽団に持ち込めば、これ一つのためにどれだけ血が流れることだろうか――それを想像しただけで、手の中の重さが増したように感じた。




