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教主の掌の上

そこで、黙っていた聖者が入ってくる。

少し悲しげに、物憂げに声を曇らせた。


「……レイグ様は、あの方はあの方なりに、年若い猊下を支えようとしておいででした。

猊下の代わりに考え、判断し、具申し……実際、主君が判断も覚束ない幼い方ならばそれは正しい忠誠です。

しかし猊下のお求めになるものはそうではなかった」

「それを、突きつけたってことか。

三年前のことだって許していなかったんでしょ。

今になってリゼルド様を出汁に対立させて、梃入れして優位を示して、言外に掣肘して。

それすらも秘密裏に騎士団と協定を結ぶための目眩ましに過ぎなかったと」


聖都で起こった揉め事、その全てがこの先を見据えた布石であり格付けだった。

こうして振り返ってみると、中々に底意地が悪い。

レイグとて、三年間咎められなかったからそれで良いと判じたのだろうに。

手札として伏せ続け、今になって開くとは。

こういう迂遠で長期的な遣り口は何とも陰湿で、貴族的だと思う。

やり取りを見守っていたエルクが静かに頷く。


「そういうものです。

判断の過ちや僅かな遅れが破滅に繋がる。

あの方々はそうした世界で、生き残りを懸けて戦っておられます。

……未だに、貴族であられますから」

「上流も上流で大変なんだねえ」


少し話し疲れた。

気づけばもう夜はすぐそこだった。

この時間帯はすぐに空が暗くなる。


「……どうする、これから一緒に帰る?

どうせ近くだし」

「はい、行きましょう。

ここのところ気の休まる間もなく、聖者様もお疲れでしょう。

お戻りになりましたら、早くお休みになって下さい」

「……ありがとうございます、エルク様」


色々不測の出来事はあったが、ともあれ教団の方針は決まってしまった。

物事は一度動き出すと止まらないものだと知っている。

これからどうなるものか、シノレにはまるで読めなかった。


いつの間にか空は群青に変わっている。

西を見ると落ちかけの日が微光とともに沈んでいくところだった。


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