正解
刹那考え込み、顔を上げる。
一度方針が固まれば後は素早かった。
自分の言葉が、行動が、見る見る組み上げられていく。
それをなぞるようにして進み出た。
一斉に注目が集まる。
不安、好奇、観察、侮蔑、次々と浴びせられるそれらに構わずすたすたと歩く。
ここまで来れば、もう開き直りの境地だった。
レイグやリゼルドの傍に来てもシノレは足を止めず、素通りし――最奥の教主の前で膝をついた。
「僕には到底決められません」
冷えて鋭い、圧力すら伴うような視線が突き刺さる。
それでも殊勝に顔を伏せ、訥々と言葉を紡ぐ。
「神と聖者様の有難き御光の元、形ばかりの司祭位を戴いてはおりますが、受洗して僅か半年。
全ての教徒の末席たる未熟の身でございます。
そんな僕の導は、地上で最も神に近き猊下をおいて、他にはありません」
ですから、と続ける。
続く言葉を告げながら、膝をついたまま一層深く頭を下げた。
「――地上の代理人たる尊き猊下。
どうか今後も、聖者様共々、お慈悲を賜りたく存じます」
長く、水に沈み込むような沈黙が満ちた。
どれほど経ったのか、涼やかな声が耳を打つ。
「――――顔を上げなさい」
教主は、酷薄なほどに澄んだ表情でシノレを見つめていた。
やがてそれが静かに綻ぶ。
声はなく、その表情で、正解だと告げていた。




