アニメ第1話のアバンに出てきそうな書き出しで短編書いてみた
あけましておめでとうございます。
今年始まっていきなりの地震。
皆さまご無事でしょうか?
少しでも気を紛らわせる何かになればと思い、3000文字程度の短いものですが、作品を更新いたします。
小さな顔に大きな瞳、すっと通った鼻。艶やかな唇。
女の子としての愛らしさを全て詰め込んだ!と言わんばかりの可愛さを、引き立たせるような小さな身体。
可愛さだけじゃない。ふとした瞬間見せる表情は何故か綺麗で、惹かれてしまう。
彼女の居る場所は少し暗いはずなのに、彼女が笑う時は光が差し、彼女が振り向く時には白い羽が舞う。
楽しい、嬉しい。生の感情を顔や身体いっぱい使って表してくれる。
そんな彼女の笑顔にたまらなく愛おしさに似た何かを感じた。
……そうか。彼女はきっと、天使なんだ。
春休みが終わったら俺も高校2年。去年はあれだけわくわくそわそわしてたって言うのに。
今じゃ全然そんなこともなく。
朝起きて、学校に行って、退屈な授業を受けて、家に帰る。
単調な毎日を過ごす日々。これが卒業までずっと続くんだろうな。
そんなことをふと思った帰り道。家の隣に見慣れないトラックが停まっているのに気付く。
「……ん? 引っ越しか?」
忙しそうに荷物を降ろしてる人を横目に家に入ると、母親が俺に声をかけてきた。
「あら、おかえり」
「うん、ただいま。あのさー、隣にトラック停まってんだけど引っ越してきたの?」
「そうそう、1時間くらい前に挨拶に来てくれたの。安藤さんって言うんだって」
「へー」
「見た感じ中学生くらいかしら? 娘さんがいてね。なんかあったら助けてあげるのよ?」
「はいはい。じゃ、俺部屋で寝てるから」
母親にそう告げると俺は自分の部屋へと戻っていく。
まだ夕方には少し早いのに、一足先に薄暗くなっている俺の部屋。
カーテンを開けたらマシになるから、いつも通り開けると目の前には……見知らぬ女の子。
そっか、そうだよな。隣に引っ越してきたってことは目の前の部屋も誰かが使うってことじゃん。
なんか声かけたほうがいいのかな?
そう思った瞬間、その女の子と目が合った。
「あっ……」
小さな顔に大きな瞳、すっと通った鼻。艶やかな唇。思わず漏れる声。
大きな目をさらに大きく見開いて、口をぽかんと開ける彼女。
ほんの少しの沈黙。それを破ったのはすっと笑顔を見せた彼女の一言だった。
「こんにちは、はじめまして。今日から隣に引っ越してきた安藤瑠々です」
「あ、ああどうも。隣の風見です」
「風見さん? ……下の名前はなんていうんですか?」
笑顔のまま、小首をかしげて尋ねる彼女。
しまった、緊張して変になっちゃった。
「逢斗。俺は風見逢斗。よろしくね、安藤さん」
ちょっとぎこちないけど気を取り直して、今度はちゃんと名前を言うことができた。
そんな俺を笑顔のまま見つめる彼女。
「あいと……あいと……。よし、覚えた! 逢斗くん、って呼んでもいいです?」
「うん。いいよ」
「私のことも名前で呼んでいいからね?」
ちょっ、ちょっと初対面の女の子を下の名前で呼ぶのはハードル高いっす…。
少し戸惑っていると親に呼ばれたのか彼女は「ごめん、いくね」と断って部屋から出ていく。
女の子としての愛らしさを全て詰め込んだ!と言わんばかりの可愛さを、引き立たせるような小さな身体。
それを見送って、はっと我に返ると開けたはずのカーテンを再び閉めてベッドに横になる。
これが俺と彼女のファーストコンタクトだった。
それから俺と瑠々はしばらくの間よく話すようになった。
色々なものの場所がわからないと困るから、と案内がてら一緒に出掛けることもあった。
可愛さだけじゃない。ふとした瞬間見せる表情は何故か綺麗で、惹かれてしまう。
「それでさ、今日お母さんと一緒に国道沿いのスーパー行ってきたの」
「ああ、あそこね。やべぇっしょ。500mlのペットボトルのお茶1本40円、2リットルで100円、はやってんのよ」
「ホントそれ! 前に住んでたところはこんな安くなかったの!」
「これが都会と田舎の差ってやつかねぇ……」
「いやいや、私が住んでたところも完全に都会ってわけでもなかったからね」
「え、そうなの? もう地名からして有名だし、都会だと思ってたんだけど」
「首都圏とかに比べたら全然じゃない? あ、お母さんに呼ばれた。いってくるね!」
「うん、いってらっしゃい」
去りゆく背中に声をかけると、振り返ってにっこり笑い手を振ってくれる。
彼女の居る場所は少し暗いはずなのに、彼女が笑う時は光が差し、彼女が振り向く時には白い羽が舞う。
楽しい、嬉しい。生の感情を顔や身体いっぱい使って表してくれる。
そんな彼女の笑顔にたまらなく愛おしさに似た何かを感じた。
「まさか……、まさか、な」
そうなのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
……そうか。彼女はきっと、天使なんだ。
’Cause I Can't get over your best smile.
だから、惹きつけられる。そうだ、きっとそうなんだ。
「うわー……、すごい綺麗だね」
親同士はすごく仲が良く、俺の気持ちを知ってか知らずか冬に星を見に行くぞ!と深夜の山に行ったことがあった。
隣にいる彼女が光る星空を見上げて声をあげる。
君の方が綺麗だよ、なんてクサいセリフを言うこともなく、君に出会った運命を想う。
「そうだね」
「流れ星見れないかな?」
「流石になんとか流星群とかでもない日だし、流れ星は見れないんじゃない?」
流れ星がもし見つけられたら、どんな願いを君は呟くだろうか。俺はどんな願いをそっと呟くのだろうか。
君と一緒にいられますように?
いや、誰かに話してしまうと、聞かれてしまうと消えてしまいそうな恋なら言わない方がいい。
今、2人きり過ごす時間を大切な宝物にしよう。
「……そう思ってた時期が俺にもありましたとさ」
あれから2年が経って、高校を卒業した俺と彼女。
なんとまさかの同い年、って知ったのは高校2年の始業式。
転校生紹介ってことで、遅れて教室に入ってきた時だった。
テンプレじゃん、運命じゃん。これってやっぱり?
なんて思っても、結局今の関係性を変えられず、彼女は彼女で友達と。
俺は俺でやりたいことをやるようになり、自然と会話も少なくなった。
たまーに出会ったころのようにお互い部屋の窓を開けてたわいもない話をしては、こんなにもそばで笑ってるのにまだ知らない君に片想いをしてるんだと否応にも気付かされる。
うまく言葉にできない気持ちに気付いて、と願ったところで今の関係性が壊れるのも怖い。
でも、それも今日が最後だ。
「……よし、書けた」
桜が咲き乱れる中、彼女との約束を果たすために机に向かっていた俺。
いつの日か物書きの真似事をしてるんだ、と話したことがある。
だから、言葉の引き出し持ってるんだね。
引くこともなく、彼女はどこか納得した感じでそう言った。
そして――
「いつか読ませて。逢斗くんの書いた話」
出会ったころのような澄んだ笑顔で言った彼女との勝手に約束だと思ったこと。
それを果たす。そのあとは彼女に告白する。
これは今も好きだよ、と伝えるためのラブレターであり、素晴らしい日々をくれた君への感謝状。
書いた作品を印刷して、時計を見ると彼女との待ち合わせの時間が近付いている。
紙束と財布、鍵を持って、俺は家を出た。
晴れた空、白い雲。俺と彼女のドライブ。
今日、この町から旅立つ彼女の枷にはなりたくない、でももし二人の間に引かれた線を越えられたら。
本当に小さな希望だけを胸に車を走らせる。
信号待ち、ふと横を見ると彼女と目が合う。
不意に口から出た「俺、瑠々が好きだ」の一言。
初めて呼び捨てにした名前。突然の告白に驚く彼女。その答えは……。
前作「親戚の再婚で増えた身内が推してるアイドルだった件」のリライト版も進めますが、他にもASMRなどの音声作品も出していきたいと思いますし、何より1月15日名古屋ダイアモンドホールで行われますライブイベントに藍那役の紫月メリーさんが藍那のキャラソン引っ提げてライブデビューします。
平日で、このような状況ですがお時間ある方いらっしゃいましたら是非お越しください。
詳しい情報は一之瀬葵翔のX(旧Twitter)に載ってます!
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