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虚と現  作者: 沙羅双樹
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侯爵令息_3


令息の小さな妹は令息が見つけた時、5つになるはずだったが

どう見ても、3つにも満たない小さな体だった


そして、体中が傷だらけで

上級治療魔法でしか、それらの傷は治せない

その上、

上級治療魔法ですら、傷跡が大部分残ると言われた


医師にそう言われるほど、妹は酷い傷を負っていた



塔に勤めていた使用人たちに話を聞くと

産まれてすぐ母に捨てられた妹は

魔力に過敏でどの乳母も受け付けなかった


そもそも、赤子の世話役を選ぶのは

産みの母の役目だ


でも、産みの母はそれを全て放棄して

実家に帰ってしまったらしく

父に命じられた家令が伝手の少ない中、

何人か宛がったらしい


実妹は全ての乳母に魔力放出で拒絶を示し

仕方なく、無理にでも乳を上げようとしたら

魔力暴走に近しい状態にまで陥ったらしい


そのせいで、その時

妹についていた使用人は皆、傷を負った


幸い、その傷自体はポーションで治る程度で

大したことはなかったのだが、

使用人たちが赤子である妹に恐怖し、世話を嫌がるのは必然だった



家令はもちろん、父に相談したが

父はようやく共に暮らせるようになった2歳の愛娘(愛人の娘)に夢中で

離乳食が食べれるようになるまで

アンジュの実を食べさせておけと言い捨て、何もしなかった


アンジュの実は高魔力果実で

食事を取れないほど弱った療養者に用いられるもので

赤子に多用するのは普通、最終手段だ



だが、父にとって

令息の実妹は己の伝手を探って、

最適な乳母を見つけてやる労力を払うに値しない存在だった


そうして、令息の実妹は誰にも育てられず

使用人に恐れられながら、最低限の世話もされず

あの塔に閉じ込められて、捨て置かれた



忙しかった家令が後進を育て上げ、役目を下り

塔にいる哀れなお嬢様に気を配れるようになった頃には

もう、どうにもならないほど

令息の実妹は人の形をした物体になってしまっていた


慌てて、家令、いや、元家令が父に相談すれば

愛人、元愛人にして現侯爵夫人が家庭教師をつければいい

と妙齢の女性を塔に送り込んだらしい


そもそも、令嬢の世話は同姓の使用人しか基本、つけられない


異性の使用人を付けていることが他家に漏れれば

それだけで、ふしだらや身持ちが悪い、と言われてしまう


どんなに心配でも

男性である元家令には実妹の世話はできない


だが、元家令は

現侯爵夫人の底意地の悪さに薄々気づいていたので

心配で、もう役目から離れているにも関わらず

家庭教師が訪れるようになった塔へ見張り目的で日参した



そこで行われた酷い虐待行為


元家令は必死に止めたし

今更とはいえ、実妹を守ろうとしてくれたが

父への注進は現侯爵夫人に止められ

家庭教師は現侯爵夫人の威を借り、虐待を愉しんでいた。


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