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虚と現  作者: 沙羅双樹
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侯爵令息_2


令息の家が破綻したのは、令息が5歳の時だった


原因は父の愛人が庶子を産んだのを母が知ったから


貴族が庶子を持つことを許されるのは、基本

家を継ぐ力を持つ嫡子

(男子が望ましいが、家の役割を務めれるなら女子でも可)

が居ない場合

または、正妻が夫にそれを許した場合


父はそのどちらでもないのに

愛人に庶子を産ませた



父母の結婚は魔力を引き継いだ子を設けるという

完全な政略のため、愛情は元からそれぞれに無かった


それでも、父がした行為は

完全なる裏切り行為であり、正妻の母や母の家に対する侮蔑行為だった


そのため、母は産んで間もない妹さえ捨てて

さっさと、莫大な違約金と慰謝料を受け取って実家に帰った


そんな母を父は引き止めることをもちろんせず

己の住む西の棟に愛人と愛人の産んだ我が子を呼び寄せ

家庭を持った



父にも母にも邪険にされたことはないし

愛されたことがない、とまでは言わない


幼い頃はそれぞれにそれなりに可愛がって貰ったし

さっさと出て行った母にも

もし、自分の権利が脅かされるならば

母の実家にさっさと来なさい、と家から去る際

抱きしめながら、言われた



ただ、それでも

母や母の実家の怒りは深かったのだろう


幼少期は母の差配で使用人が決められる


そのため、幼い頃から仕えてくれていた者たちは

母の実家から来ていた者がほとんどだというのに

母はこの家を去る時、彼らも一緒に連れ去ってしまった


その中には乳母もおり

忙しい生母に代わり、幼い頃から愛してくれたその人が

居なくなる日は声を上げて泣いた


そんな令息を不憫に思ったのだろう


一つ上の乳兄弟は乳母と帰らず、己に仕え続けてくれた


とても、とても嬉しかったし

とても、とても申し訳なかった



西の棟で家庭を持った父とは

それ以来、家長と嗣子だけの関係になり

一切私的な関係を持つことはなくなった


それを寂しいと思うより、嫌悪の方が勝っていたと思う



それでも、

家に対する責任や己の存在意義を認識していたから

己に課せられる勉強や訓練には手を抜かず

黙々と務めていた


そんな激変する環境に身を置いた、幼かった令息にとって

産まれたばかりの実の妹という

今までの生活に存在しなかったモノに対する認識は薄く

微かに頭の隅にあったモノも生活の中で消えていった


そのことを令息はずっと生涯に渡って悔やむことになる。

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