王太子_17
母がコソコソ動いているのは知っていた
大きなことは父が潰していたが
小さいことは見逃す、見過ごすしかなかった
先のことで力を大幅に削られたとはいえ
母の家は古き一族の中でも、一、二を争う家
長い年月の中、それこそ地中を這う根のように
国中にあらゆる手を伸ばしている
そんな後ろ盾を持ち、何より母自身が
実務においても、社交においても、策謀においても
当大一の淑女と呼ばれるほど有能だ
その上、強欲で、権力欲が強い母を押さえ込むのは
情けないことに、今の王家では難しいことで
大きなことを仕出かすのを押し留まらせるのがやっとだった
今度大きなことを仕出かせば、妃の称号を奪う
それだけが権威に取り付かれる母を押さえつける切り札
そして、母を抑えることができても
母の後ろ盾である家はそれすら切り札足りえない
父と母は表向き、穏やかに家族の形を続けながら
裏では壮絶な鍔迫り合いを繰り返していた
母は策謀に強く、暗躍を好むことから
外相として長く勤めていた母の実家の血を強く受け継いでいたのだろう
父の張り巡らせた手を搔い潜り
一番の手先になりそうな次代の婚約者ではなく
弟の婚約者を使い、暗躍していた
母にとっての誤算は
守護騎士として何をおいてもこの国を護ることを第一にしていた
かの侯爵家があっさり全てを捨てて、国に背を向けたことだろう
侯爵現当主にとって
実子である侯爵令息、侯爵令嬢を害されたことが腹に据えかねたのか
これ以上、侯爵家を踏みにじられることに我慢の限界を迎えたのか
それは分からない
だが、母の策謀が元で
正しく、国の忠臣と言えたかの侯爵家を失ったのは事実
母は病気療養として
王家の罪人が入る棟で繋がれ、死ぬまで魔力を奪われ続ける
もちろん、母に仕えていた者で
暗躍に関わった者たちもまた、母と同じく棟に入り
魔力を絞られ、棟の下働きとして生涯暮らすこととなった
母の実家は母の暗躍に組したとして
公爵から降爵して侯爵となり、300年間何があっても陞爵できない
また、抜けた守護騎士の穴を強制的に埋める役目を負った
それでも、かの侯爵家が抜けた穴は大きい
なぜなら、あの後
侯爵家は分家も配下の家も関わらず
学園に通っていた者、運営や教職などで関わっていた者
それだけでなく、寄付を行っていた者や搬入に関わっていた者
ありとあらゆる当時の学園と関わりを持つ家全てを
侯爵家の庇護下を奪った
主家たる令息、令嬢の困難を前に
正しく動かぬ配下なぞ、不要、と文字通り切って捨てたのだ。




