王太子_16
そして、それは父も同じ考えで結果、婚約が定まる前に
現当主に弟が呪いの称号を受けていることを説明された
婚約を辞退してもいい、と告げられた現当主は
ジッと目を閉じ、数刻佇んでから尋ねた
「粛々と己の役目を腐らず歩めば、称号の影響を受けることはない
それは真実でしょうか?」
尋ねられた父は指にある宝珠に魔力を送りながら断言した
「国守りの精霊に誓って
<呪い子>の称号を持っていても、粛々と己の役目を腐らず歩めば
称号の影響は一切ない」
それは己の発言が嘘ならば、国守りの精霊に裁かれてもいいという
この王城に置いては一番の誓約といえる
それを受け、現当主は跪いて、深く頭を下げた
「この度の婚約、謹んでお受けいたします」
ようやく、弟の守護者を見つけた安堵から
思わず、ジンッとして、次代は静かに息を何度も吐き出した
そんな次代を父は優しい目で静かに見つめていた
弟の護り手を己の手で定められただけでも上出来と考えていた次代に
まるで、褒美を授けるように弟の婚約者が切っ掛けで作られた薬により
次代の体調はみるみる良くなった
魔力をある程度減らすこと、薬を飲むことは変わらぬとはいえ
劇的に己の体を動かすことは容易くなり、
床につく時の憂鬱や恐怖は薄れた
明日を必ず得られるわけではないが
それは誰しもに言えること
そう思える今を次代は愛しく思う
闇から抜け出した、まさしく、そんな日々
長く続いた国だからこそ
今もまだ、深い汚泥を晴らしたとは言えぬ
でも、それを目指して一歩ずつ歩む父がいるからこそ
これから父の背を支え、そして、その目標を必ず継いでいくのだ、と
希望に満ちた日々
そんな風に浮かれていたからいけなかったのかも、しれない
弟の称号が牙を剥いた。




