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虚と現  作者: 沙羅双樹
74/76

王太子_14

通常、王家の子として生まれたならば

産んだ妃の家がその育成や守護に注力するのが慣例だ


だが、もし、慣例通りにすれば

きっと、10日もしないうちに弟は()()()()()するだろう


だからといって、父が表立って守護に回るのは慣例上おかしい


そんなことをすれば、あっという間に

ハイエナのような奸臣たちがどこからか弟の真実に辿り着いてしまう


弟を守れるだけの力のある、そして、王家と大きく関わりのない

誠実な守護者足りうる家を探すことに

ようやく今注力できるようになった


次代が弟を見つけた時はそんなときだったらしい



ただ、弟のことで

母が今後身籠っても王家の者としないという約束がなされ

王家に対する口出しも取り上げられた


かなりのさばっていた王妃の実家も

この件でかなり力を削られたのもよかったと言える


でも、表向きは何の罰もなく、王妃のまま

曾祖父も相変わらず気ままに国内を渡り歩いて

ただ、間に生まれただけの弟だけが針の筵といえる王家に捨て置かれて

あんな風に、誰にも目も、愛もかけられず、息をしている


その事に、震えるほどの怒りをその時、次代は感じた


そして、決意した

その場で宣言した

「弟は私が護り、育てます


あの子は私の弟だ、これ以上、決して誰にも蔑ろにはさせないっ」



宣言した次代を父は眩しそうに見つめ、弟に関する全権を委ねてくれた


まだ11でしかなく、何より

今日と変わらない明日を望めぬ体だったその当時の次代にとって

弟の守護というのは、間違いなく、とても大きな重荷だった


だが、次代は弟という重荷を背負うことで

飛躍的に強くなった


魔力を抜くために、使う魔道具は体の中をやすりで削るような痛みを感じるし

体の調子を整えるために飲む薬は舌が麻痺してしまうほど苦い

何より、体が怠くて、体を起こしているだけでめまいがする


それでも、次代は毎日、必ず、弟の手を取り

手ずから、食事をとらせ、顔を洗えば、褒め

服が切れれば、撫でまわし、事あるごとに抱きしめ

弟に家族、という無償の愛を注がれ、注いでいい相手がいることを教えた


それが人として生きるための根幹である

と次代は何となくその頃も思っていた


そして、そうして次代が弟に目をかけることで

王家に仕える者たちにも弟を決して軽視することがないように


次代はそうして、手探りで、でも、確実に弟を守って見せた


それは、同時に次代の生に対する執着にもなった



弟を発見した当時

父に話を聞いたときに受けた説明はここまで詳しくはない


母が国母となるために犯した愚かしい罪の概略と

結果、生まれた弟の状態や現状、そして、問題点などの大雑把なものだ


その後、次代が育つにつれ、自分で調べ、その都度、父にも聞いた結果だ


次代は弟に纏わることだから、というのもあるが

今の王家が踏みにじったそのすべての罪を知っていなければならない、と考えていた


そして、明日を知れぬ身だからこそ

次代は己の手が届く限りの策を巡らし、

何があっても弟を守るための体制を着実に整えていった


次代は弟に関わることで、飛躍的に国を背負う者として成長した


そのことに回りは喜び、結果、弟の身の安全も確実となったのは

次代の、今も知らぬ話だ。


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