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虚と現  作者: 沙羅双樹
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王太子_13

最終的に、表向きの説明では

曾祖父がダンジョンから持ち込んだ呪いの品を誤って

身籠っていた母が触れてしまい、結果、胎の子に被害が出た

ということになった


その表向きの説明で密かに根回しするために

弟は生まれた直後から隠され、公には存在しない者とされた


根回しもせずに、第二王子として表に出てしまえば

≪呪い子≫の称号を隠すのは難しい


この称号は神事に関する全てに拒絶される

だから、慶事、弔事全てから外される


もし、何の根回しもせず、≪呪い子≫の称号持ちだと知られれば

それが罪がない幼子だとしても、必ず嫌悪や好奇の目に晒される



更に都合の悪いことに

王家の直系であることを示した容姿を持ってしまったせいで

弟にはどこにも逃げ場がない


死産として、実の父である曾祖父の元、私生児として生きるにしろ

実は甥に当たる男を父とし、第二王子として生きるにしろ

≪呪い子≫の称号を持つ限り、茨の道だ


曾祖父の元にいれば、曾祖父の後継者として同一視され

曾祖父と同じ存在に育つことを求められるだろう


第二王子として立ってしまえば

必ずいつか、≪呪い子≫の称号が牙をむく


≪呪い子≫の称号持ちが王家にいても安寧を得ることはない


≪呪い子≫の称号はそういう称号だった



どちらがマシかでしかない決断だったが

父はせめて己が手で守ることを選んだ


曾祖父がこの罪のない幼子を守るとは父には思えなかったからだ


そして、

今更、役に立たない処か、己を貶める元となった幼子を憎みつつある母や

存在を隠しているにも関わらず、秘密を暴き、優位に立とうとする奸臣などから

幼子の生命と秘密を守れる体制が整うまで

父はとりあえず、事態が隠せるギリギリまで匿うことを選んだ


それはいくら真実、我が子と言えないとはいえ

罪のない幼子を守るための決断だったといえる



そうして、煩わしい奸臣などの目を欺きながら

国の根幹に関わる重臣たちのみに、沈黙の誓約を施して

第二王子の存在と共に、表向きの説明で公に出れない事情をまず知らせる


第二王子が神殿に纏わる全ての公務に関われないこと

そのサポートをするために、彼らには知っていてもらう必要があるからだ


当然、表向きの説明を聞いた者たちは

曾祖父と、何より、母の迂闊さを責める声が上がったが自業自得である



そして、曾祖父と母の不貞の末なんていう醜聞を知り

不貞の子が生まれると呪われるなんていう曖昧な言い訳を知るのは

母の実家を含め、呪い子の称号の調査に関わったこの醜聞に関わった者たち


最後に真実、曾祖父の称号などすべてを知るのは

王家の根幹に関わる、極限られた者のみ、という

とんでもなく、面倒な状況になっているらしい


そして、この状態に回りを落とし込むまで

なるべく少ない人数で、隠すように育てられた結果が

先ほど次代が見た光景だった。


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