王太子_11
その時の本題、母の暴走の二つ目が次代の弟に関することだ
次代が生まれて、暫くは表面上
王家はとても、とても穏やかな時間だった、らしい
だが、次代が病に侵され、手を尽くしたが打開策が見つけられないとなった時
母はまた、狂った
そして、王家は情けないことに、当然のようにそれに振り回される
マトモな子を求め、実験の再開を言い張る母を
父は諫めたがもちろん、母は聞き入れない
父からすれば、今目の前にいる我が子を守り、病の打開策を探すのが先決で
王位を継ぐ子という意味で言えば
叔父、叔母すべてを合わせれば、すでに4人も生まれている
王家としては何とでもなるのだ
ならば、大事なのは我が子の生命と人生となるのは
親として当たり前の感情だ
だが、母は王位に、というより、国母となることに固執する
子種さえあればいい、と言い張り
あれほど可愛がっていた我が子に見向きもしなくなった母に
父はとことん愛想が尽きたが
国の情勢で母を無視できず、仕方なく従った
だが、それが間違いだった
なぜなら、生まれた子が持ってはいけない称号≪呪い子≫を持っていたから
秘密裏にではあるが、母は一時、反逆者として軟禁され
そして、母の実家も徹底的に調べられた
なぜなら、≪呪い子≫は
初代が契約していたという、国守りの精霊が
反逆者として断じた者の血族に出ると決まっているから
結果、母や母の実家に、数々の問題はあれど、反逆の意思はない、となった
なら、なぜか
そう、母方ではなく、父方の血に問題があった
母が不貞を働いた相手、それは、曾祖父であった
曾祖父が退位したのは44の時
「飽いた」と王冠を投げ捨て、国内にある離宮を転々としている、とされている
だが、それは真実ではない
曾祖父が43の時、彼は護法玉の元へたどり着けなくなったのだ
改めて鑑定を受ければ、≪王家の護り手≫の称号は消え
≪剝奪者≫に置き換わっていた
それは初めてのこと
過去にも≪王家の護り手≫の称号が消えることは
残念ながら、あった
だが、その場合、≪逆賊≫、≪堕落者≫、≪落伍者≫などの称号が付き
称号の状態に気づく前に呪いに罹り
あっという間に、だが、苦しみ抜いて、命を落とした
呪いに罹った時点でその人物が鑑定を受け
称号を失ったこと、新たな負の称号を得た結果
国守りの精霊に呪われたとわかる
それが今までだった
そして、呪いを受けた者が、受けた後にその血を継いで生まれた子には
≪呪い子≫の称号がつくことも分かっていた
彼らは一様に、祝福からほど遠い苦難の多い人生を歩んだ
だが、粛々と己の役目を腐らず歩めば、いつの間にか
称号は消え、子を成すこともできた
残念ながら、≪呪い子≫の称号が消えぬ間は子が出来ない
多分それは、精霊の温情なのだ
万が一にも、≪呪い子≫の二の舞にならぬように、という
そんな≪呪い子≫の称号を
第二王子であるはずの幼児がもって生まれてしまったのだ。




