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虚と現  作者: 沙羅双樹
66/76

王太子_6


父は王位を継ぐが、己の魔力特性により

次代を生み出すことは実弟に任せるつもりだと

ずっと公言していた


父がそんな公言を許され、受け入れられたのは

祖父、そして、曾祖父の存在が大きい


祖父、そして、曾祖父の存在こそ

王家の大きな過ちであり、今、この国を蝕んでいる元凶ともいえる



何代も平穏な時代が過ぎ、人々がそれに慣れてしまったように

一部を除けば、貴族たちもまた、堕落と腐敗に落ちていった


そして、それを取り締まるべき王家もまた

古き一族との馴れ合いや策謀に負け、飲み込まれ

その力を落とし、初代様への誓いから緩々と遠ざかっていた


その集大成ともいえる存在が曾祖父であり、祖父だった



曾祖父はそのカリスマ性や政治力には問題がなかったものの

とにかく色事に目がなく、目を付けた男女問わず、その後宮へ招き入れた


その結果、ずっと子が少なかった王家に

雷属性を持つ王子、王女が十数人産まれ、はじめは()()()喜ばれた


でも、十全に王子や王女が産まれた後も

曾祖父は後宮に妾や妃を連れ込んで、止めない


王子や王女はむしろ過多となり

その結果、王家の内で争いが絶えず

妾や妃だけでなく、王子たちの不審死も頻発するに至った



もちろん、それに至るまでに

王家に連なる者も古き一族も曾祖父を止めようとした


だが、曾祖父はこう言って、彼らの意見を切って捨てた

「私は初代様を見習っているだけだ」


そう、初代様の唯一の汚点と言える行為が後宮の発足だった



王家の隠された記録によると

初代様はとにかく女性に弱かったらしく

一部を除いた古き一族の令嬢はもちろん、エルフに獣人、女優に、街娘と

曾祖父のように、美しければ、男でも、というほどではなかったようだが

とにかく、事あるごとに

女性に惚れられ、求められ、拒めず、後宮に連れ帰ったという



国で難治が起きると、飛んで出て行って自ら解決に尽力したという初代様を

国民の皆が感謝し、今も尊敬を集めている


でも、後半になると

初代様は難治解決ではなく、新たな花を探しに行ったと揶揄されるほど

初代様は外へ出れば、女性を連れ帰ったという


策謀や諍いはあっただろうが、その頃は初代様の力が絶大だった

正直、初代様自ら赴く必要のある難事が国内で頻発したとは考えにくい


にも関わらず、初代様は外へ赴くことを止めなかったし

女性を連れ帰ることもまた、止めなかった


それが許されたのは、初代様の影響力と

何より、子が生まれたのは、図ったように(いや、図ったのだろう)

古き一族の令嬢の一部からのみだったからだろう



また、曾祖父の色事によって、表向き、生まれた子の数は多かったものの

秘事である「王家の護り手」の称号を持つ子の数は実は数人しかいなかった


王家に纏わる者たちもそれを危険視していた


そういう様々なわけで、結局、曾祖父の言い分は通ってしまったのだ


それが、一つ目の大きな過ち。


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