王太子_5
父が話した事情は、眩暈がするような
母に対して今まで感じていた、全ての感情を覆されるような話だった
父はそもそも、子を作る能力を不安視されていた
それは持って生まれた魔力の特質上、どうしようもない話で
それでも、父が国王となったのは
王家の、一番大切な役目上、父が最適だったからだ
王家の一番大切な役目
それは、法陣の維持、設置の管理だ
法陣は町ができると
出力となる陣を設置し、陣と対になる法玉に魔力を注ぐことで
町に結界が張られる
そして、その陣を描くことができるのは
王家の血を継ぎ、そのスキルを持った者でこれは多く存在する
だが、要の法玉
これを生み出すのは容易ではない
法玉の元となる、護法玉は王城地下に安置され
王家に生まれた者で「王家の護り手」という称号を持つ者しか
その場所には辿り着けない
そして、称号を持っていても
護法玉との相性があるようで、同じだけの魔力を注いでも
護法玉に貯め込まれる魔力量が一定ではない
護法玉に一定の魔力が満ちると
護法玉の何十分の一ほどの小さな玉ができる
それが各地を守る貴族の元へ配られ、陣と紐づけ
法玉に魔力を注ぐことで結界を発生させる
これは、この国だけの特別な奇跡であり
初代様が遺してくれた、王家の存在意義だ
だから、王家を継ぐのは「王家の護り手」の称号持ちで
護法玉との相性が一番良い者と決まっている
そして、この事は王家の一部にしか知らない秘事だ
表向きは風の上位魔法である雷属性の魔力を持ち
判定玉を一番光らせた者が次代となるとされている
判定玉とは
護法玉として、表に出している大き目の法玉(通称、判定玉)のことで
注がれた魔力によって補充される程度で光を放つように細工してあるのだ
よって、王家の一部しか、本物の護法玉の存在すら知らない
判定玉を大げさに祀ることであらゆる害意をそこに集め
決して失われてはいけない護法玉の存在は徹底的に秘匿する
そうして、王家は建国からずっと
国の要と言える護法玉を人知れず、護り抜いてきた。




