王太子_4
「その通りでございます」
そう、認めた父の侍従長に次代は命じる
「ならば、せめて、護衛をつけろ
私が迎えに来るその時まで、何があっても護り抜くと己の名に誓え」
父の侍従長は、年若い侍従に己についていた護衛数人を預け
彼らに名の誓いを促し、また、己自身も名の誓いを次代を見つめ、行った
王家の人間に仕える使用人が仕えるに当たって名の誓いを行うことなど
当たり前のことなのに、今まで仕えていただろう年若い侍従さえ
弟に誓いを立てていなかったそのことに激しい怒りを感じ、眩暈がする
それでも、それを、今は飲み込む
今、この場所で、彼ら相手に怒りを爆発させても意味がない
弟を護る最善は、父に会い、事情を知り、対策を立てることだ
『誰が何を言おうが、どんな事情があろうがこの幼子は私の弟だ』
目を閉じ、怒りを飲み込んで、父の侍従長を見ると
初めて、フォークでつけ添えの野菜を口に運べた日と同じような目で
次代を見ている
そのことに、次代は少しだけホッとした
父の元に辿り着くと
父は忙しく執務をしており、少しだけ、次代は反省した
ソファで体が休めるようにと
柔らかいクッションが置かれ、次代がいつも飲んでいる優しい紅茶が置かれる
置いてくれるのは、ついさっきまできっと、必死に次代を探し
後宮を走り回っていただろう、次代の侍従たち
そのことに、気まずさと少しだけ申し訳なさを感じ、目を伏せると
まるで、わかっています、大丈夫です、というように
彼らはせっせと、次代の世話を焼く
それはいつも通りで、次代が当たり前だと思っていた日常
それが、その手がなぜ、弟に分け与えられないのか
そのことがとても、とても、今は悲しく、空しい。




