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王太子_3
その時、ようやく
窓からまだ、年若い侍従が一人必死に走ってきた
キッと睨みつける次代にオロオロとしている様は
まるで、王城の、しかも、王家に使える使用人に相応しく見えなくて
余計に次代の怒りを滾らせた
年若い侍従は、一応、目の前に現れた子どもが次代だと気づいた様子で
這い蹲うように、平伏し、許しを請う
そして、
どうして離れた、護衛はどこだ、乳母は何をしていると
矢継ぎ早に問い詰める次代に、ただ、お許しを、と繰り返す
話にならん、と弟を連れて、己の宮に戻ろうとしたとき
父の侍従長が唐突に現れた
そして、父が呼んでいる、と次代を促す
弟をこのままにできない、と次代は首を振る
「ココなら弟様は安全が保障されます」
父の侍従長がそう静かに言うと
次代はようやく、ただ事ではないのだ、と思い知った
それでも、ジッと父の侍従長を見つめ、弟を抱きしめたまま、見定める
「嘘は許さない、この子は私の弟だ。そうだな?」
父の侍従長が認めるまで、決して、弟を離す気はなかった
今、離してしまったら、きっと、また次代には弟が隠されてしまう
そう、判っていた。




