侯爵当主_11
全ての証拠を取りそろえ
貴族院に突きつける前に、王妃とその実家を脅しつけたのは
もちろん、最上の婚約者を取り上げたことに対する嫌がらせ
最上の婚約者を獣王国に送った時の言葉も
恥知らずな妻が出て行った時に責め立て、言い放った事も
一字一句、侯爵当主は覚えていた
どう、落とし前を付ける、と脅す侯爵当主に
王妃の実家は獣王国との販路を譲り、王妃と恥知らずな妻の実家を切り捨てた
獣王国から運ばれてくる果物は確かに珍しく
外交手段として有益だが、昨今、交易としては上手くいってなかった
それはもちろん、侯爵家が関係している
獣王国というのは強者こそ全てという国のため
文明で言えば、停滞しているといえる
では、何で補っているかといえば、他国との交易だ
特に、隣国である我が国から魔道具や生活雑貨を輸入し
生活の利便性を高めていた
だが、最上の婚約者への仕打ちが判明した後
かの国には、一切の魔道具は輸出されなくなった
それはなぜかと言えば
今ある魔道具の基盤といえる魔法陣を作ったのが
侯爵家だからだ
魔道具の管理は侯爵家が全てしている
当然、新しい魔道具が開発された場合
それを検証するのも侯爵家だ
それは開発者の権利を守ると同時に
危険性のある魔道具が市井に蔓延しないようにするためだ
そして、もちろん
その魔道具が使われる場所も侯爵家の管理のうち
それは万が一
敵国に兵器となりうる魔道具が流れることがないように
魔道具を輸出したことで国を危うくさせないための措置だ
だから、魔道具師は修行に入る段階で
侯爵家の管理下に入ることを例外なく、誓わせられる
万が一
その誓いを破ろうとすれば、その命は消える
そして、魔道具を販売する店も
侯爵家と誓約魔法を結ぶ
侯爵家が認めないとした場所へ売った場合
免状が燃え上がり、それは侯爵家に知られる
そうなれば、反逆者として
商家の店主とその親類、そして、
商家に努める店員とその家族すべてが処刑される
だから、彼らは決して侯爵家に逆らわない
ちなみに、万が一
魔道具が盗賊などに奪われ、
国外に出荷されてしまっても問題ない
早いと数日、長くとも10日もすれば
その魔道具は使えなくなる
そういう仕掛けが施してある
仕掛けの剥がした魔道具しか国外には販売されず
仕掛けを剥がせるのは侯爵家の者しかいない
そして、当たり前だが
国外に販売される魔道具にはそれ用にまた違う安全装置を施してある
万が一にも敵国に自国の得分を利用されるなどあってはならないからだ
それが作動しなくとも
魔道具師によるメンテナンスが受けれなければ
機能の複雑さにもよるが、3~10年で自壊してしまう
もちろん、これらは取引時に説明され
了承を得なければ、販売とならない
だから、獣王国が最も欲していた魔道具は
最上の婚約者の事があって、侯爵家から輸出厳禁となった
その上、扱いも雑だったんだろう
先に取引していた魔道具もあっという間に自壊した
そういう訳で、獣王国はいら立ちを強めていた
でも、他国の貴族令嬢にした仕打ちを
我が国以外からも非難されているため
その措置を獣王国も受け入れるしかなかった
その結果、
自国の貴族令嬢を生贄にしてまで作った獣王国への販路は
王妃の実家にとって問題ばかりが残ったお荷物となっていた
そのため、侯爵家に体よく押し付けたつもりだろう。




