表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚と現  作者: 沙羅双樹
54/75

侯爵当主_9


10になった長男は魔力量も豊富で

魔力操作も既にそれこそ、そこらの大人(聖騎士)達より巧だ


長男の魔力量も魔力操作も

歴代の侯爵家の中でも3本の指に入ると

10歳時点でさえ言われている


だから、長男を担ぎ出せば

侯爵当主の負担は確実に半分以下になる


それでも、長男を補佐に担ぎ出す気はなかった



それはもちろん、己のように

成人前に守護騎士の補佐をすることで

長男の体に己のような瑕疵が出ることを

親として厭うたのもある


だが、それ以上に

侯爵当主は長男に誰より期待を寄せていたのだ



長男は陣作成という魔法陣を開発できるスキルまで

持って生まれてきてくれた


長く続く侯爵家の中でも

陣作成スキルを授かったのは7人だけ


彼らは皆、侯爵家の悲願とも言える

聖物の儀式で使える理想の魔道具を作る、その夢を

大きく前進させてきた者たちだった



その上、長男は

膨大な魔力とそれを扱える技量(巧みな魔力操作)

そして、氷の魔法まで持って生まれてきた


長男は侯爵家の最高傑作といえる



だから、きっと、侯爵家悲願である魔法陣、

今ある魔法陣のように

侯爵家の者が核を作り上げなければ、意味がないような

侯爵家ありきの不完全な魔法陣ではなく

氷の魔力を持たない者が聖物を纏め上げる


そんな魔法陣を長男ならきっと作り出してくれる


侯爵当主は長男にそれを期待していた



己のように

豊富な魔力と氷の魔法だけを当てにされ

使い潰されてきた多くの、侯爵家出身の守護騎士とは違い

これから先に生まれる、未来の侯爵家出身の守護騎士が

使い潰される道具から人間に戻る一手を打ってくれる


そんな存在として

侯爵当主は長男を見ていた


だから、長男が健やかに

そして、のびのびと勉学に励むことができる環境を

親として、何より、侯爵家当主として望んでいた



とにかく、侯爵当主の負担は最大限に大きくなり

結果、家内の事まで手が回らず

令嬢としての意義位は持ち合わせているだろうと

思っていた二人の妻が

どうしょうもない愚物と判明し、

その時、久しぶりに侯爵当主は絶望したくなった


でも、始まりは己が正しく

恥知らずな妻が責務を果たしたか確認しなかったことだと

侯爵当主にも分かっていた



だから、

長男が長女の育成の権限をよこせと言われたとき

反対する家内の声を一切封じた


侯爵当主から見ても、長女を守れるのは長男だけだと思った


何より、生まれと育てられた環境のせいで

貴族令嬢として欠陥を抱えてしまった長女を生かしたいと

純粋に願っているのも、家内で長男だけだと感じたからだ


だから、侯爵当主は侯爵家当主ではなく、()()の親として

長男の足手纏いになる、切り捨てろと言う周りを黙らせ

長男に長女に対する全権を与えた



ちなみに、役目を果たさなかった附属品の後妻からは

与えていた権限を全て取り上げた


長男への(侯爵家の王家に)干渉(対する盲愛教育)を嫌って阻んでいたが

家内を回すために、仕方なく

領地から弟が送ってきた古参の侍女を侍女長として

家内を守るように言い渡した


今の長男ならば、

ソレ(盲愛教育)に抗える知能と知識があるとも思っていた



平穏無事とは言い難いものの

侯爵当主の目が届かず、手も足りなかったせいで荒れていた家内は

長男と侍女長によって平静を取り戻した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ