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虚と現  作者: 沙羅双樹
51/75

侯爵当主_6


長女が生まれてすぐの頃

突然、最上の婚約者の異母妹が一人の幼子を連れて

侯爵家に訪ねてきた


幼子の親子鑑定を求めて、現れたのだ


親子鑑定は魔力発現をしないとできなかったため

万が一、親子鑑定前に幼子が見つかると取り上げられるか

どこかへ追いやられるとでも思ったのだろう


最上の婚約者の異母妹は

自分の生母の実家に隠れ住み、幼子を隠し育てたらしい



親子鑑定はした


そして

それがあの全てを捨てた夜にできた己の子と判明した


でも、どうでも良かった


なぜなら、幼子の、その顔立ちも、その色味も

最上の婚約者に瓜二つだったから………



最上の婚約者とその異母妹は色味こそ似ているが

その顔立ちはまるで違う


なのに、幼子の姿形は

まるで、最上の婚約者が生んだ我が子のようで

侯爵当主は幼子を得て、久しぶりに生を感謝した



不本意だし、不要だが、幼子の生母として仕方なく

最上の婚約者の異母妹も夫人として引き取ることになった


生まれ変わってくれた最上の婚約者を穏やかに育ていけば

かつて氷付いてしまった、この国を守る意義をさえ

もう一度取り戻せる、そんな気さえ、その時はしていた



それを邪魔立てしたのは恥知らずな妻だった


何を思ったのか

夫人の権利などとほざいて、全てをほっぽって

離婚を突きつけ、突然、出て行った



そも、恥知らずな妻との結婚は純然たる契約婚で

そして、侯爵当主の行いはその契約に反していない


なぜなら、

恥知らずな妻の実家である伯爵家への支援の代わりに

子を三人産むこと

もしくは、子を二人以上産むか10年経つことで

離婚が成立し、支援金は返済不要とする


そんな契約だからだ



伯爵家は投資に失敗し

領地処か爵位を売るところまで追い詰められていた


そんな彼らの代わりに借金を返し

爵位に見合った生活ができるように支援金を渡したのは侯爵家


そんな侯爵家に伯爵家が条件を突きつけれる訳がなく

侯爵当主が誰とどのように過ごそうが

誰と子をなそうが、伯爵家に文句を言われる筋合いはない



だというのに、夫人の権利などと

対等なる婚姻関係を結んだ家同士でも

放置されがちな、明文化されてすらない慣例を持ち出し

家を出てった恥知らずな妻


その上、

恥知らずな妻はまだ二人しか子を生しておらず

10年も経っていない


明らかな契約違反だ



だというのに、またあの女(王妃)がしゃしゃり出てきた


夫人の権利は守られるべきで

侯爵当主のしたことは紳士として恥ずべき行いだと

そう言ってきたのだ



その時の侯爵当主の怒りは

王都を凍り尽くさんばかりだった


当時、あの女(王妃)初めの子(第一王子)が病弱で

その後、()()()()()()()()()()子を授かることができず、焦っていた


側妃を進める周りに苛立ち

そんな時に、恥知らずな妻が相談を持ち掛けたせいで

ありもしない落ち度を無理やり作られ、賠償金まで払わされた


幼子の登場に

緩やかに軟化していた侯爵当主の怒りは再び吹雪荒れ

そして、頂点に達した。

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