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虚と現  作者: 沙羅双樹
49/76

侯爵当主_4


最上の婚約者が

ハーレムで出産に耐えられず、母子共に亡くなった


侯爵当主がその話を耳にしたのは

長男の3歳の祝いの席だった


思わず、侯爵当主は祝いの場であることも忘れ、駆け出し

元婚約者の実家へ向かった



そして、見た、見てしまった


やせ細り、腹だけ異様に膨れ

体中、噛み跡と暴行の後だらけの死体となった最上の婚約者の姿を



王太子妃、現王妃は

獣王国に嫁ぐことに懸念を示す彼らに約束したはずだ


傍仕えを王太子妃自ら選び、必ず同行させ

最上の婚約者の心身ともに守って見せる、と


そして、その約束が果たせない場合

最上の婚約者をどんな状態でも帰郷させる、と


そのために、どうかこの国のため

この国の貴族として無心に尽くしてほしい、と



だが、蓋を開けてみれば

確かに、嫁ぎ先の公爵家へ傍仕えは同行したが

一か月もしないうちに強制的に帰国させられ

最上の婚約者は一人ハーレムに取り残されていた


王妃もその実家もそれを知りながら

侯爵当主にはもちろん、最上の婚約者の実家や王家にすら

そのことを知らせなかった



かの国では貴族の権利が強く

何より、かの国にとって獣人以外の人種は塵芥と変わらない


傍仕えは嫁ぎ先の公爵家で冷遇され

命の危機さえ感じ、逃げ帰ったらしい


そう、最上の婚約者を見捨てて……



何一つ、そう、何一つ


侯爵当主には知らせられなかった


侯爵当主の知らぬうちに、誰も味方のいない場所で

最上の婚約者は苦痛と絶望の中、その命を閉じたのだ



さすがに、王家は事態を重く見て

嫁ぎ先の獣王国の公爵家と王太子妃の実家に責を求めた


だが、すべては今更

もう、彼女は帰ってこない


侯爵当主の中にあった侯爵家の者としての誇りも

建国の王に連なる者として捧げていた王家への敬愛もかき消えた



そんな中、

侯爵当主にすり寄ったのは、最上の婚約者の異母妹


なぜか、昔から侯爵当主に思いを寄せ、

異母姉の婚約者である侯爵当主に執拗に付きまとっていた


そんな彼女(婚約者の異母妹)を侯爵当主は嫌っていた



でも、全てがどうでも良かった


だから、最上の婚約者の異母妹に媚薬を飲まされ、

強制的に関係を結ばされても、捨て置いた


屍となった侯爵当主は

ただどうでもいい、と思いながら、毎日を過ごした



それでも、侯爵当主が命を絶たなかったのは

今、己の命が途絶えたら、まだ幼い長男が

強制的に、守護騎士の務めを押し付けられると思ったからだ



守護騎士は

今は引退し、補佐役に徹している父が務めるだろう


でも、父だけでは役目を果たすのは無理だ



長男はまだ3歳でスキルを持たないが

魔力発現済みで、しかも、魔力量も豊富だ


ならば、侯爵家で開発した魔道具を使って

かつて侯爵当主が7つで父の補佐に駆り出されたように

長男も守護騎士の補佐として引っ張り出される恐れがあった


それだけは許すわけにはいかなかった。

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