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虚と現  作者: 沙羅双樹
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侯爵当主_2

貴族は魔力が豊富だ


古き一族と呼ばれる、

建国からこの国に仕える古参の貴族ならなおさら

その魔力は長命種に届く


そう、魔力を己のためだけに使い、生きれば

彼らは長命種並みの寿命を持つ


だが、短命種の人間と変わらない100年から

長くとも、200年を超えずに亡くなるのは

領域浄化に魔力を注ぐせいだ



その中でも守護騎士を務める侯爵家は

古き一族の中でも、魔力量の多さが随一といえるのに

侯爵家の者は皆、凡そ、7,80年という短命で亡くなる


それはもちろん、守護騎士を務めているからだ



守護騎士などと呼ばれているが

それが体のいい消耗品であることは

侯爵家に生まれた者たちは気づいていた


頻繁に魔力枯渇を繰り返せば、

魔臓器が痛み、短命となるのは必然といえる



それでも、侯爵家は守護騎士であり続けた


多くの古き一族が放棄したその、

生贄と変わらない役目を淡々と引き受け続けた


それは建国当時、魔物と雪に覆われ

豊富な魔力があろうと、食べる物にも欠いて

餓死する我が子を見送るしかなかった生活を変えてくれた建国王への

深い感謝と重過ぎる忠義故だった



老いも若きも幼きも関係なく、侯爵家に生まれた男は

魔力を求め、氷魔法を極めるために過酷な修行を繰り返し

侯爵家は訥々と2000万年以上の間、国に尽くした


そして、

老いも若きも幼きも関係なく、侯爵家に生まれた女は

侯爵家を支えるために尽くし

その身と命を引き換えにして、未来の侯爵家を維持するための次代たちを

産み出し続けた


侯爵当主も、もちろん、

そんな代々の侯爵家が守り続けた意思を継いでいくつもりだった



侯爵当主が今の在り方に疑問を持った切欠は

己の最上を理不尽に奪われた日に始まった



侯爵家では伴侶は魔力の相性を一番に考える


魔力の相性が良くないと

生まれる子どもの魔力量が極端に下がるのだ


両親の魔力量も大事だが、

魔力の相性が何より、子の魔力量とスキルに影響すると

侯爵家では言われていた


そのため、近親婚も繰り返されたし

それによって弊害も多くあった



近いところでいえば、侯爵当主の両親は近親婚だ

父の魔力の相性が厳しくて、従妹が選ばれた


そのせいで

侯爵当主が生まれる前に二人、後に一人

生まれないまま、母は子を失っている


そして、侯爵当主のすぐ下の弟は

先天的な障害で下半身が動かない


幸い、妹と末弟は健康体で生まれたが

産褥で、母は末弟を産むとすぐ亡くなった



母が父に嫁ぐと決まった時

子に不具合が出ることも、そのせいで

領地と守護騎士の存続のため、最低でも3人を産み出すために

母の命が長くないことも分かっていた


それでも、両親は契り、子をなし続けた


それは、なぜか


もちろん、守護騎士という役目を果たすためだ


それが侯爵家とそれに連なる家に生まれた者にとって

何より大事な役目だったから。

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