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虚と現  作者: 沙羅双樹
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第二王子_19


そうして、歪を感じる一年を過ごしたが

公爵令嬢の言うようには動かなかった


結局、

侯爵令息と男爵令嬢の関係は研究室の後輩から進まず

また、実妹の侯爵令嬢も誰とも交流しなかった



誰が優しさを示しても、誰が正義を捧げても

実妹の侯爵令嬢はただそれを無関心に眺めるばかりで

ただ、学園で孤立を進んで深めた


救いは実妹の侯爵令嬢が

侯爵令息と同時に卒園できることだろうか



恐ろしいことに

実妹の侯爵令嬢は侯爵令息同様、秀逸で

入学試験で初等部をスキップすると

中等部一年の期末試験で、侯爵令息同様

中等部二年と高等部をスキップしてしまった


そのせいで、より実妹の侯爵令嬢を狙う者が増え

彼女(実妹の侯爵令嬢)に接触が増えたのは

彼女(実妹の侯爵令嬢)にとって良い事だったのか、今では彼にも分からない



思うように、深まらない仲に男爵令嬢は落ち込んでいたが、

それ以上に、取り乱したのがなぜか、公爵令嬢だった


最近の公爵令嬢は常に

間違っている、と呟き、何かに焦っていた


でも、第一王子の言うように

人の気持ちというのは、どうしたって操れるモノではない



そも、前提が違うのだ


侯爵令息が男爵令嬢を望まないのならば

光魔法持ちだろうが、男爵令嬢がどう望んだって

侯爵令息の婚約者になるのは無理だ


仕方がない、と彼は静観するつもりだった


でも、そうは言ってられなくなる



学位式典の前日、公爵令嬢が泣きついてきたのだ


公爵令嬢は王妃に

侯爵令息と男爵令嬢の仲を繋ぐように言われているのだ、と

その程度の事、王子妃となるなら、差配できて当然だ、と



彼は安易に王妃のいる場で侯爵令息の話をした己を悔いた


彼に王妃が何も言ってこないから忘れてくれたのだ、と

(第一王子)の言い分を受け入れてくれたのだ、と思っていた



でも、違った


妃教育で王城を訪れる公爵令嬢に圧力をかけていたようだ


王妃と話すという彼に

それではだめなのだ、と公爵令嬢が拒む



侯爵令息は研究所の教授に頼まれ

卒園後も力を貸すことになっているそうで

とにかく、卒園した侯爵兄妹が二人で

侯爵家にまた籠るのを阻止すればいいのだ、と


どうか、実妹の侯爵令嬢が領地送りになるように

侯爵令息に言ってくれないか、と



彼は悩んだ


王族として考えるならば

公爵令嬢の提案を受け入れるべきではない


だが、もう少しだ、という公爵令嬢の言い分もわかる



この前、ずぶ濡れになっていた男爵令嬢と

その場に立ち尽くす実妹の侯爵令嬢を見て

侯爵令息が事情も聴かず、声を荒げ、実妹の公爵令嬢を叱責した


そして、侯爵令息は実妹の侯爵令嬢をその場に放置し

男爵令嬢を抱き上げて医務室に運んだのは、学園では有名な話だ



熱の有無に関わらず、侯爵令息の中で

男爵令嬢が大きくなりつつあるのを彼も感じている


だが、侯爵家に戻り、虐めが過去になり

(そもそも、事実無根の冤罪だ)

侯爵兄妹が元通りの絆を取り戻せば

きっと彼らは互いの絆で満足し

他を受け入れないような気もする


それは確かに、王家としても不利益だと感じる。


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