第二王子_18
いつの間にか、侯爵令息と男爵令嬢の仲は学園で公認となり
いつの間にか、男爵令嬢の虐めの首謀者が侯爵令息の実妹となっていた
彼から見て、男爵令嬢に向ける侯爵令息の目には相変わらず
その熱を感じなかったが、公爵令嬢を含め、皆が
侯爵令息の特別だ、と男爵令嬢を持て囃した
確かに、特別ではあった
侯爵令息が放課後共にするのは男爵令嬢だけ
その場所が研究室や図書館だとしても
侯爵令息の隣に座ることを許され、普通に言葉を交わせるのは
男爵令嬢だけだった
それ以外の令嬢が近寄れば
相変わらず、絶対零度の目ですげなく断られるのだから
確かに特別といえる
だが、もう片方は冤罪だ
侯爵令息の実妹の侯爵令嬢は確かに
一緒に帰らなくなった侯爵令息が男爵令嬢といるのを
ポツンッと立ち尽くすように見ている姿が見られる
念のため、実妹の侯爵令嬢と同じ
中等部一年の特級クラスに所属する者に確認もとった
実妹の侯爵令嬢は
学園に来て、教室に入り、必要がない限り動かない
また、昼食も初め、侯爵令息と取っていたが
侯爵令息が来なくなっても、毎日同じ場所、同じ時間で取る
そして、帰りは
侯爵令息の後ろ姿を見つければ、視界から消えるまで見つめ
ただ、馬車に乗って帰るだけを繰り返す
そんな侯爵令嬢が男爵令嬢を虐めるなんて無理だ
その上、侯爵令嬢はいつも一人でいて、誰とも交流しない
それなら、誰かを使って
男爵令嬢の虐めに加担することだって無理に決まっている
ならば、なぜそんな噂が立ったのかといえば
侯爵令息の異母妹の侯爵令嬢が原因だ
異母妹は実妹と違い、自己主張の激しい少女で
その地位を振りかざして、下位の者に厳しく当たる姿を
学園に入って、彼自身も何度か目にしている
そんな異母妹だから
男爵令嬢でしかないのに
異母兄に特別扱いされていることが気に入らないようで
男爵令嬢の事も執拗に虐めているらしい
彼自身はまだそれを見ていないが
彼の学友たちがそれを何度か見ているし、
見た者から話しを聞いている者も多い
学年や学部が違うとしても
虐めなどの問題行動を学園内で誰にも見られずに行うなんて
この王侯貴族が通う学園でできるはずがない
だから、正しい事実は
男爵令嬢の虐めの首謀者が侯爵令息の異母妹なのだが
どこでねじ曲がったのか、
男爵令嬢の虐めの首謀者が侯爵令息の実妹になっていた
それが間違いなのは
物事を正しく把握できる者なら誰もが知ることだが
その間違いを正すものが誰もいなかった
なぜなら、侯爵令息の実妹は誰とも交流を持っておらず
誰もが他人事で、無関心だった
それに、侯爵令息の実妹の魔力量は
侯爵令息同様、甚大でその伴侶の座を狙う者も多い
だが、今までは侯爵令息が番犬のように
侯爵令息の実妹の周りを排除していて、近づけなかった
それが、男爵令嬢と共にあるようになり
また、虐めの噂が出たあたりから、仕置きなのか
侯爵令息は学園で実妹の侯爵令嬢を放置するようになった
そのため、わざと侯爵令息の勘違いが加速するように
男爵令嬢の虐めの首謀者が侯爵令息の(実)妹だ
と噂を進んで広めたようだ
そのせいで、
実妹の侯爵令嬢はどんどん学園で孤立をしていった
流石に、
これは問題なのではないか、と彼は思ったが
公爵令嬢が止める
今は辛いかもしれないが、自立の時なのだ、と
侯爵令息の婚約さえ決まったら、
私が手を差し伸べて差し上げます、と
だから、あと少しだけ、男爵令嬢に時間を上げて下さい、と
彼は迷ったが、頷いた
それが最善だという公爵令嬢の言葉をいつも通り信じて。




