第二王子_16
王太子として忙しくしている第一王子と
学園に通い出した彼では
纏まった時間を取ることが難しくなっていた
そのため、第一王子に相談できたのは
月一度の家族揃ってとる晩餐になった
食事の合間にそれぞれが近況を話し
いつも通り、和やかな時間が過ぎる
侯爵令息の事は何度か晩餐でも話題に上がり
その優秀さにできれば、第一王子の側近
最低でも、第二王子の側近に収まってくれないか、と
そして、王家や王妃の実家である公爵家の派閥の中で
魔力相性のいい令嬢とどうにか縁が繋げないか、と
そんな話が何度か過去の晩餐でも上がっていた
だから、彼は特に躊躇なく
晩餐のその場で第一王子に相談を持ち掛けた
令嬢を一切寄せ付けない侯爵令息が
薬学の後輩とはいえ、傍にいることを許している男爵令嬢がいること
今のところ、侯爵令息からは熱は感じないものの
男爵令嬢は侯爵令息に心を寄せているように見えること
男爵令嬢は庶民出であるため、魔力こそ少ないが
光の魔力持ち故、魔力相性は問題がないこと
(光と闇の魔力だけはどの魔力とも反発しない)
その上で、侯爵家は男爵令嬢を受け入れる可能性があるかどうか
そんな相談だった
でも、第一王子が答えるより先に
王妃である母が激しく反応を示した
光持ちの令嬢ならば、
侯爵家とは言え、充当だと
侯爵令息の魔力は莫大で、
普通の属性では相手となりうる令嬢がほとんどいない上、
侯爵令息はとても相性に煩いらしい
だが、光持ちならば
どれほどの魔力差があろうが、関係ないし
侯爵令息が気にする相性も問題ない
後は身分差だけ、と王妃が早速、己の派閥で
男爵令嬢の受け入れ先を探そうとするのを止めたのは
第一王子だった
「おやめください
今の話は多分に憶測が含まれ、
彼の意思が見えてない
それなのに、彼の意思確認もせず
元は庶民出の、魔力も少ない男爵令嬢を
勝手に婚約者を決めるなど、侯爵家を馬鹿にした態度です
何より、それは越権行為で、許されない」
静かに、でも、有無を言わせない迫力で迫る第一王子に
王妃も負けてない
「高位貴族として、血を繋ぐのは何より大事な役目でしょ?
なのに、今まで婚約者を決めない方が無責任なのです
それを、私自ら手を差し伸べて、何の問題があるというの?
そも、かの侯爵家は守護騎士を務めているのよ?
きちんと、その魔力を繋ぐことこそ必要でしょう?
今まで、あれこれと言い訳を並べて役目を放棄しておいて
今更、気持ちなど、些細な事、馬鹿馬鹿しい」
そう言い切った王妃は彼に
きちんと、侯爵令息と男爵令嬢の橋渡しをすることをいい置いて
さっさと晩餐の場を引き上げた
国王はその間、何も言わず
ただ、第一王子と第二王子の肩を優しく叩いて
王妃の後を追うように、晩餐の場を出て行った
彼はどうしてこんなことになったのか、と
途方に暮れた思いで、そんな二人の後ろ姿を眺めていた。




