第二王子_15
そんな中、公爵令嬢が男爵令嬢を構うようになった
学園での居場所を無くした男爵令嬢を保護しようとしたのだろう
公爵令嬢だって、
子爵次男と交流をしていた男爵令嬢には
いい感情を向けてなかった
それでも、被害者と定められた男爵令嬢が
学園で居場所をなくすのは違うと思ったのだろう
もしかしたら、子爵次男に対する不義理に
心を痛めている彼を思いやってくれたのかもしれない
そんな公爵令嬢を彼は誇りに思った
無事、初等部2年をスキップし、中等部1年になった男爵令嬢は
魔力が足りず、魔力の扱いも伸びず
中級光魔法の習得に手こずっていた
だから、
公爵令嬢の勧めで薬学を専攻するようになっていた
確かに、魔力が少なく、魔力操作も伸び悩む男爵令嬢が
より効果的に光魔法を利用するなら、ポーションが一番だ
製薬スキルも持っていて、生家は薬家だという
良い差配だと思ったし、彼も応援した
彼が気が付くと、
学友である侯爵令息と姿を見るようになった男爵令嬢
正直、意外に思った
侯爵令息は婚約者の有無に関わらず
一切の令嬢を傍に寄せなかった
侯爵令息の実妹である侯爵令嬢に対しての溺愛は
学園どころか、社交界でも有名だ
侯爵令息は実妹である侯爵令嬢を至宝と呼び
実妹である侯爵令嬢以外に興味を示さない
それを咎める者(侯爵令息の婚約者の座を狙うもの)も多いが、
侯爵家の複雑な家族事情や特殊な役割はある程度知られているため
どちらかといえば、以前までは微笑ましく見られていた
ただ、流石に侯爵令息が成人し、学園最終年になっても
婚約者を決めない今、それは問題視されつつあるのも確かだ
だから、相手が男爵令嬢だとしてもいい傾向だと思った
侯爵令息に少し話を振ってみると
薬学の研究室に手伝いとして男爵令嬢が通ってきているのだ
と、特に何の興味もなさそうに侯爵令息は答えた
後輩として研究室に入ったから相手をしているだけ
そんな雰囲気の侯爵令息に苦笑するしかない
でも、男爵令嬢の目には
子爵次男に向けていた時には見えなかった熱が
侯爵令息に向けられていることには
外から見た彼には分った
それに侯爵令息が気づいているかは聞いてない
でも、人の感情に敏いのは貴族の慣らいと言える
だから、排除しないということは
男爵令嬢をある程度、受け入れているのだろう、と
彼は静観するつもりだった
そんな時、公爵令嬢が相談してきた
男爵令嬢では、侯爵家に嫁ぐのはできないのか、と
少し時期尚早だと思ったし
婚約とは家の問題だ、口を出すべきではない
彼はそう諫めたが
公爵令嬢はいい切欠なのだ、と珍しく引き下がらない
あれほど、他を寄せない侯爵令息が唯一
傍にいることを許したのが男爵令嬢であること
それ即ち、特別だということ
何より、侯爵令息も実妹である侯爵令嬢も
未だに婚約者を持たないのは、
互いに互いを縛りあっているような不健全で関係だ、と
そして
実妹である侯爵令嬢への偏愛が正されれば
実妹である侯爵令嬢も侯爵令息から兄離れでき
学園内で他の学園生と交流するだろうこと
それが正しい学園生活であり、健全な関係であること
「侯爵家の血を繋ぐためにも
侯爵令息にとって苦痛に感じない相手が必要だと思うのです」
そう心配そうに言う公爵令嬢の優しさに
彼は悩んで、第一王子に相談することにした。




