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虚と現  作者: 沙羅双樹
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侯爵令嬢_4


最愛の兄が現れ、

恐怖と痛みを与える家庭教師が消え

言葉や生活を兄手ずから教わる


そうして、少女はようやく人となった



少女は人になってから

言葉を知り、本を読み、人と出会い

少しずつ世界は広がった


それでも、少女にとっては

いつまで経っても、何を理解しても

兄以外の全ての存在が恐怖であり、無だった



それをイケないことだと言う人がいたが

イケないことだと兄は言わなかったので気にしなかった


少女にとって、兄の言う言葉が全てで

兄とある現在だけが、生きていると言えた



ただ、静かに兄の傍に在りたい


兄にとって、己が唯一でなくとも構わない

兄にとって、己が傍に置いとけない存在でなければ構わない


兄の役に立つために

少女は兄の望むことを只管に続けた


だが、少女の願いはやはり叶えられなかった



少女を一番大切にしてくれていた兄が

別の女性(男爵令嬢)を一番大切にするようになった


5つ上の兄が学園に入った頃から

勉学の忙しさで傍に入れる時間は減った


そして、兄が男爵令嬢と過ごすことが増えると

その減った時間は更に減り

朝食の時間だけが唯一兄と過ごせる時間になった



それはとても、とても、寂しかった


でも、仕方がない事だとも思った


少女にとって、兄は唯一だけど

兄にとって、少女が唯一でないことは知っていたから


でも……



『どうか、お願い

兄さまを私から()()取らないで』


そう叫びたくなる気持ちを少女は一生懸命に飲み込んだ


少女は兄が居らず、(寂しさに)独りで過ごす(耐える)時間より何倍も

兄に邪魔だと思われ、要らないと捨てられる事が怖かったから……

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