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虚と現  作者: 沙羅双樹
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第二王子_14


令嬢たちは子爵次男が距離をとったことで

一応は納得したのだろう


令嬢たちは男爵令嬢に関わらなくなった


子爵次男が令嬢たちを一切、近寄らせなかったのをやめて

学園内で最低限の交流を再開したのも後押ししたのだと思う


ただ、浮名を流すことはせず

会話には答えるが、相手には一切していない


そんな令嬢たちに対する一線が

身勝手な感情を向ける令嬢らへの子爵次男の怒りを如実に表していた


実はそんな怒りがこれ以上、子爵次男の中で燃え上がるのを恐れ

令嬢たちは大人しくなったのかもしれない



そして、

前は男爵令嬢と二人でよく見かけた図書館や中庭には

子爵次男は行かなくなり、

女子禁制の鍛錬場に籠ることが多くなった


彼が学園で再会した頃には

最低限、貴族としての嗜み程度にしか

武術を鍛錬していなかった子爵次男が鍛錬場で

本気で剣を振って、体を鍛えていた


子爵次男が何を思って、

何を目指そうとしているかは分からない


ただの友でいられなかった彼には

それを子爵次男に聞く権利はない


だが、それは子爵次男にとって、いい変化だと思った



でも、それでも、我慢できなかったのだろう


己の婚約者の心を奪った者がいることが………


何より、排除しても

その心を占めている女がいること

いや、きっと、

排除してしまったからこそ、生涯居続けることが………



それが分かったからこそ、子爵次男の婚約者だけは

令嬢たちが引いた後でも

男爵令嬢に何度か詰め寄っていた


それを子爵次男に酷く咎められて

我慢の限界に達したのだろう



ある日、男爵令嬢を己の火魔法で焼き殺そうとした


そして、火魔法を受ける寸前に

子爵次男が割って入り、咄嗟に己の風魔法で防風壁を作った


敵ならば、そのまま押し返せばいいが

流石に、子爵次男の婚約者に押し返すことができなかったのだろう


子爵次男は防風壁の前で火魔法が消えるまで

男爵令嬢の前で守り続けた


結果、子爵次男は大やけどを負い、大事件となった



男爵令嬢の光魔法で応急処置され、

駆け付けた治療師に治療されたため、命の別状はないものの

広範囲にやけどの跡がかすかに残った


また、軽度ではあるが

業火の中、防風壁を保持し続けた両腕に

機能障害も起こしていたため、

子爵次男は医療施設に入院となった


当然、子爵次男の婚約者は謹慎処分になり

1年間の修道院勤めを言い渡された


また、流石に放置できない、と婚約も解消となった



子爵次男も事の責任を取るため

医療施設で試験だけは受けさせてもらい、

学園を早期卒業することとなった


だが、男爵令嬢は学園に残った


男爵令嬢の行いに退学となるような

咎めだてされるような問題になるようなモノはない



何より、男爵令嬢にはまだ拙いとはいえ、

あれだけの大やけどを完治はできずとも、応急処置をし

治療師が辿り着くまで

子爵次男を持たせた功績があった


治療に当たった治療師も

もし、男爵令嬢の応急処置がなければ

子爵次男は自分が来るまで持たなかった、と言い切っている


そのため、男爵令嬢が処分され

その光魔法を学べなくなるのは問題だった



だから、被害者として男爵令嬢は学園に残った


だが、男爵令嬢に対する学生たちの心象は

男女問わず、最悪になった


暴力や嫌がらせといった行為自体一切なくなったが

風当たりは子爵次男と交流していた頃より確実にきつくなった


生徒の誰もが男爵令嬢をいない者と扱い、必要最低限ですら関わらない


その上、

庇ってくれる子爵次男ももう、学園にいなかった



それでも、彼には大きな問題行動が起こらなければ

そこに介入するほどの大義はなく、王族として動いてはいけない


子爵次男に申し訳ないと思いながらも

一人心細そうに学園生活を送る男爵令嬢を見ているしかなかった。

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