第二王子_7
まあ、そんなことはいい
そう、そんなことはどうでもいいのだ
大事なのは
第一王子の病状を改善する野草が見つかったこと
ただ、見つかった野草、もとい、薬草は
完治するものではなく、あくまで緩和するものらしい
でも、緩和だけでも、魔力保持量が随分上がって
そのお陰で、魔力不足による他の病気に罹る危険は低くなり
罹ってしまっても、治療魔法で治すことができるようになった
発見した薬草が長期的に使った場合、効き続けるのか
また、弊害はないのか、等々
まだ、様々な問題はあるが、それでも大きな前進に変わりない
話を聞いた彼は泣きながら、
誰より大好きで、大事な実兄に抱き着いた
7つ上なのに、抱きしめれば分かる
細く、頼りない体
でも、彼は知っている
その体の持ち主が熱い雄志を心で燃やし、
そして、誰より深くこの国の未来を日々思う
勇侠で人傑な王になるのに相応しい人だと
だからこそ、悔しくて仕方がなかった
病などというつまらぬモノに
実兄の足が引っ張られることも
病などという些細なモノで
実兄の能力を疑う、阿保な者共がいることも
だから、嬉しかった
これで、実兄はようやく思い通りに前に進むことができる
これで、実兄を侮る阿保を黙らせることができる
緩和できたなら、完治だってできるはずだ
そう信じられる
そんな思いで、彼は実兄に抱き着いた
ヒシっとしがみ付く彼をいつも通り、でも、
いつもよりずっと力強く抱き締めてくれる実兄を
泣きながら、見上げると
実兄もその目に涙を浮かべながら
でも、嬉しそうに彼の頭を何度も何度も撫でてくれた
小さな声で、ありがとう、と繰り返す実兄と
抱き合いながら、その日は久しぶりに同じベッドで眠った
とても、とても、幸せな日だった
あの日、彼は心に決めたのだ
公爵令嬢を生涯、誰より大事にしよう、と
公爵令嬢が望むことが
実兄の、そして、国の叛意とならぬ限り
それを叶えてみせようと
まずは、公爵令嬢が向けてくれる好意を
鏡写しのように、返すことにしよう
それが、彼の最大の望みを叶えてくれた恩人への
彼ができる、最大の恩返しになると信じて………




