公爵令嬢_8
ここで大事なのは、
課金アイテムのルールもさり気なく伝えること
課金アイテムは攻略対象者一人にしか使えないし
一度使えば、ひと月は使用を出来ないようになっていた
制限などゲームじゃないのだからいいかとも思ったが
願いが届けば、とかいいつつ
それ、製薬スキルの効果だろ?、とも思い当たれば
現実への影響を考える
だから、守らないと、
願いが叶わないどころか、逆効果になるとも言い含め
課金アイテムのルールを守るように主人公に言い聞かせた
課金アイテムが功を奏したようで
主人公と共にある侯爵令息の姿を度々見るようになった
そのうち、極々稀に、僅かではあるが、
主人公に笑顔さえ見せるようになったが、やっぱり
侯爵令息の実妹に向けるような、優しい笑みは見せない
侯爵令息の実妹に向ける笑顔を向けられてこそ
トゥルーエンドだということだろう
それでも、だ
主人公以外の他者に向けている表情よりは
よほど気を許した表情を主人公に対して浮かべる侯爵令息を見て
これで良かったのだと思う
シスコンなんて今でも理解できないし
高位貴族の、しかも、嫡子でありながら
それを恥ずかしげもなく公言する様など
正直、虫唾が走る
なんて言っても、実妹を至宝と呼び、
誰より愛するなんて不毛だし、間違っている
この世界では魔力が近しい者を番と呼び、
その前では実の兄弟ですら、伴侶となりうる
もちろん、血が濃過ぎれば、子が設けられなくなったり
産まれた子に障害が出るのは前世と一緒だ
そのために、貴族が近親者で番う時は
魔道具で子が産まれるか判定して貰うらしい
近親婚は多くはないが
魔力を引き継ぐ必要のある貴族には
少ないと言えない関係でもある
そのことを今世の常識では理解しているつもりだ
でも、前世の常識がどうしても消せなくて
嫌悪を感じてしまう
何より、実妹以外に愛せるならば
その相手と番うのが
人としても、生物としても正しいに決まっている
始まりこそ、課金アイテムで底上げした感情でも
共に過ごせば、男と女なのだ
情が沸き、それが絆になるはずだ
侯爵令息のルートでいいのは
悪役令嬢が酷い目に合わないことだ
主人公と侯爵令息が結ばれれば
侯爵令嬢は実兄にちょっと叱られ、領地へ戻るだけで
別に何のマイナスもない
修道院落ちとか、ましてや、家名取り上げとかだったなら
彼女だって侯爵令息のルートに主人公を進めたりしない
守護騎士の役目を引き継ぐために
王都を離れられない侯爵令息とは物理的に離れ離れになってしまうが、
離れれば、兄離れもでき
侯爵令嬢にも新たに他に気になる人ができるはずだ
なんせ、高位貴族の癖に
兄妹揃って、未だに婚約者すら作っていない今が異常なのだ
多少強引ではあるものの
変態を真っ当にできたことに彼女は満足していた
そう、あくまで彼女は善意のつもり、だったのだ。




