公爵令嬢_2
題名は覚えていないし、内容も詳細は朧気だが
ストーリーとしてはありきたりと言えるだろう
両親が亡くなり、薬師の祖母に育てられていた少女が
10で受けたスキル判定で治療魔法を持っていることがわかって
男爵家に養女として引き取られたことから話が始まる
そして、13で学園に入り
学園在学3年(ルートによっては5年)の間に
攻略対象との絆を深めていく
そんなよくある乙女ゲーム
彼女が一番好きだったルートは
メインヒーローである彼女の婚約者の第二王子
通常、王子を攻略するなら
この設定の主人公の場合、聖女になるとかがテンプレだと思うが
このゲームは違った
むしろ、聖女になると
聖騎士とのエンドでしかハッピーエンドにならない
そして、攻略を進めているルートが聖騎士以外で
聖女になってしまうと、グットエンド以下でしか終わらないのだ
聖女、というか、聖人は個人で護り切れる存在ではない
だから、個人の伴侶に納まることができないのだ
もちろん、相手が王族ならば、それは可能だが
そうなれば、第二王子が王太子になってしまう
病弱だが、聡明な実兄である第一王子を尊敬している第二王子が
それを望むことはない
万が一にも、自分が聖女を娶って
第一王子の足を引っ張らないように
第二王子はあっさりと主人公の手を放す
所謂、お友達エンドのグットエンドで終わってしまう
そんな所に、ネットでは
第二王子はヘタレだとブラコンだと言われ
メインヒーローなのに、人気が中途半端だった
でも、そんな第二王子が彼女は前世から大好きだった
第二王子はブラコンなんかじゃない
第二王子は国を何より大事に想っていて
得意な武術に傾倒しがちな己より、
聡明で国のために日々努める実兄が
その頭脳もその志も誰より王に相応しいと思うからこそ
己が実兄の障害とならないように
決して、第一王子より前に出ないように気を付けているのだ
もし、万が一にも第一王子が道を誤まり
王として相応しい存在でなくなったのなら、
きっと第二王子はたとえ相手が血を分けた大切な兄であっても
剣先を向け、王座から引き摺り下ろすだろう
そんな王族としての誇りを持つ第二王子を
前世の彼女は素敵だと思った
そして、
どれほど第二王子個人として主人公を愛しても
(好感度が上がり切っていても)
第二王子は主人公が聖女になれば手を放すのだ
第二王子にとって、そうすることが国の安寧に繋がり
そして、結果として、愛する人の幸せに繋がると
深く信じている
そんな不器用で
でも、一本筋が通った第二王子が好きだった
そんな彼女が詳細までゲーム情報を覚えているのは
何度も繰り返しプレーした第二王子のルートのみだ。




