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虚と現  作者: 沙羅双樹
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侯爵令息_10


そんな決意が崩されたのは

なぜだったのか、分からない


13になり、学園に入ってからも

実妹との時間を優先できるように

できる限りの学業を試験を受けてスキップして

回される執務もさっさと片付け

実妹との時間を精一杯作った


それが令息の幸福で日常だったはずが

なぜか、その異物(男爵令嬢)が己と己の至宝の間に入ることを

許してしまった



初め、異物(男爵令嬢)は薬学の後輩として現れ

実妹の傷跡を消すための薬を開発していた令息の手伝いをするようになり

そのうち、共にある時間が自然と増えていった


それに違和感を覚える時もあったが

それが実妹のためになるとも思えて、

放課後に誘われるソレをどうしてか拒めなかった



家に帰ると寂しそうに実妹が迎えてくれたが

残念なことに執務が残っていて、実妹と過ごすことができずにいた


ならば、明日は早く帰ろうと

寂しさを纏った実妹を見るたび思うのに

それを繰り返す


そして、最後には

実妹が嫉妬から異物(男爵令嬢)を害していると聞いて

実妹を叱ってしまった


怖がりな実妹にそんなことできるわけがない、と

冷静に断じる己がいるのに

感情や態度は実妹を叱ってしまう



一人冷静になれば、おかしいと思い

実妹に謝罪しようとさえ思うのに

異物(男爵令嬢)の被害を聞くと

感情の制御を失って、実妹を叱ってしまう


そんな己に苛立ちさえ感じるのに

段々己に沸く感情すら本物なのかわからなくなって

思考が空転する


そんな中、あの惨劇は起きた



あの時、学位式典の卒業生代表挨拶をするためにいた舞台袖で

同じく、同い年だが、在学生代表挨拶をする第二王子に

このまま反省が見られなければ、実妹を王都から追放するしかない

と言われ、思考が止まり、気持ちが急いて

あんな場所(学位式典)で実妹を叱ってしまった


しかも、

己の行いを改められないなら、反省できるまで領地にいろ、などと

一度も考えてない事をあの時、なぜか、令息は口にしていた


口にしてから、口にした己への違和感に苦しみ

実妹の目から光が消えたことにさえ気づかなかった


そして、令息の至宝は令息の目の前で砕けた



あの後

いろんな者がいろんな事を懺悔していったが

令息にはもうどうでも良かった


令息の至宝を令息自身の手が壊してしまった


辛うじて、息をしている実妹を連れて

令息は全てを捨てて、領地にある己が所有する邸宅に籠った


もう二度と、至宝と離れないように


もう二度と、至宝が傷つかないように


まるで、宝を抱いて眠る竜が如く

令息は一切の下界を切り捨て、世俗から消えた。


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