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漫才・コント集

【漫才】女子大生に転生した孫尚香

作者: 大浜 英彰

二人「どうも、女子大生二人で漫才をやらせて頂いてます!」


ツッコミ「私はごく普通の日本人女子大生なんですけど、この子はちょっと個性的なんですよね。」


ボケ「どうも!孫呉(そんご)弓腰姫(きゅうようき)こと孫尚香(そんしょうこう)です!転生後はこうして、女子大生としてキャンパスライフを満喫しています。」


ツッコミ「はい、『三国志』で御馴染みの孫尚香さんです。今は普通のチャイナドレスを着てますけど、孫呉の姫君なんですよ。どうせなら当時の服を着たら良かったのに。」


ボケ「それが一着しかない漢服をクリーニングに出しちゃってねぇ。だけど、アクセサリーはあの時の物を使ってるんだ。この(かんざし)なんか、婚約プレゼントだよ!」


ツッコミ「おおっ!劉備玄徳からのプレゼントね。こっちの櫛は?」


ボケ「これは兄ちゃんからの誕生祝いに貰ったんだ。」


ツッコミ「孫権からのバースデープレゼント!それじゃ、こっちのイヤリングは?」


ボケ「これは高鳥屋(たかとりや)百貨店の正月セールで買った福袋に入ってたんだ。」


ツッコミ「それだけ現代のアクセサリーなの?なんかチグハグだなぁ…」


ボケ「普通のチャイナドレスを着ている時点で、何を今更…」


ツッコミ「自分で言いなさんな!漢服の洗い替え位、用意しておきなさいよ。」


ボケ「気安く言うけど、ちゃんとした漢服って高いんだよ。だから今は語学教室のバイト代を頑張って貯めてるんだ。」


ツッコミ「随分と現代慣れした孫呉の姫さんだねぇ…まあ、少し前まで普通の現代人として生きていたんだし無理もないか。ところで孫尚香さん。前世の事で真っ先に思い出したのは、どんな出来事だったの?」


ボケ「やっぱり直近の記憶は思い出しやすいよね。長江へダイブした時の事は真っ先に思い出したよ。」


ツッコミ「それって劉備玄徳(りゅうびげんとく)の後を追った時の…ごめん、辛い事を思い出させちゃって。」


ボケ「気にしないで、昔の話だから。でも世の中って奥深いよね。もし夏休みに行った市営プールでウォータースライダーに乗らなかったら、自分が孫尚香だと思い出せなかったんだから。」


ツッコミ「えっ?市営プールで前世の事を思い出したの?」


ボケ「冷たい水に浸かった瞬間、不思議な既視感を覚えたんだ。オマケにその時は、ビキニのブラ紐が解けそうで焦ってたの。そうしてアタフタしているうちに孫権兄ちゃん達の事を思い出したんだ。」


ツッコミ「前世の記憶を思い出した瞬間が、水着がポロリしかけていたタイミングとはね…孫呉の人達が聞いたら、どんな顔をするんだろう?」


ボケ「きっと孫権兄ちゃんなら、『酔ってる時なら大目に見るけど、素面の時にしては駄目だ!』って具合にお説教だね。」


ツッコミ「えっ?それって、どういう事?」


ボケ「泥酔すると服を脱ぐ癖があるみたいなんだ、私って。後で孫権兄ちゃんから『部下が目の遣り場に困ってる』って叱られちゃったの。だけど孫権兄ちゃんも酷い絡み酒をやるんだから、私の事は言えないよね。」


ツッコミ「確かに孫権の酒癖の悪さは有名だけど、孫尚香も別ベクトルで酒癖が悪かったとはね…」


ボケ「流石に孫権兄ちゃんも反省したみたいで、『酔っている時の発言は無視してくれ』って皆に宣言したんだけどさ。」


ツッコミ「じゃあ蜀漢(しょくかん)に居た時は、張飛と気が合ったんじゃない?張飛もお酒でやらかしている事が多いから、孫権とタイプが近いんじゃ…」


ボケ「御明察!張飛さんの豪快な飲みっぷりに親近感が湧いちゃってね。それで一気飲み対決を申し込んだら、スッカリ意気投合しちゃったんだ。」


ツッコミ「まさかの呑み友達!」


ボケ「笑い上戸で気さくなんだよ、張飛さんって。呉に帰ってからも、『また一緒に呑みたいなぁ…』と考えてたんだ。」


ツッコミ「それじゃ張飛が暗殺された時はショックだったでしょ?」


ボケ「当たり前じゃない!張飛さんに喜んで貰おうと、ナイフジャグリングを練習したんだよ。私が費やした時間と労力、何処にぶつけたらいいの?」


ツッコミ「問題はそっち?宴会芸の心配してたの?」


ボケ「でもさ、こうして現代に転生した事で希望が湧いてきたんだ。もしかしたら張飛さんも転生してんじゃないかってさ。」


ツッコミ「ポジティブシンキング!」


ボケ「もしかしたら会場に来ているのかもね。お客様の中に張飛さんはいらっしゃいませんか〜?」


ツッコミ「ちょっと待ちなよ!そんな旅客機で急患が出た時のアナウンスみたいな呼び掛けで、張飛が来る訳ないでしょ!そこは普通、『お医者様はいらっしゃいませんか』でしょ。」


ボケ「じゃあ、華佗(かだ)先生はいらっしゃいませんか?」


ツッコミ「確かに医者だけど!その人、曹操に殺された人じゃない!」


ボケ「そうそう!」


ツッコミ「言うと思った!それにしても…そうやって張飛や孫権の思い出話をしていたら、孫呉の姫様として生きてた時代が恋しくなるんじゃないの?」


ボケ「ううん、あの時代に帰りたいとは夢にも思わないよ。何せ現代日本は楽しいからね。」


ツッコミ「それじゃ劉禅(りゅうぜん)だよ!その人、確かに劉備玄徳の息子だけど。」


ボケ「だってさ、この時代のお酒ってどれも美味しいんだもの。こないだ居酒屋でやってみたレモンサワー飲み放題は、最高だったなぁ…あのレモンサワーのサーバーでも送り付けたら、曹操も懐柔出来ちゃうんじゃないかな。」


ツッコミ「そこは温州蜜柑サワーじゃないの?まあ、いいや。そんなにレモンサワーの飲み放題が好きなら、今日の打ち上げで飲んだら良いじゃない。」


ボケ「だけど私、一杯目は紹興酒(しょうこうしゅ)に決めてるんだ。何しろ私は、孫尚香(そんしょうこう)だからね。」


ツッコミ「それじゃ駄洒落じゃないの!」


二人「どうも、ありがとうございました!」

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[良い点] 面白かったです! [一言] XIさんの企画から参りました。テンポがよくて脳内再生がはかどりました。 「三国志」は知らないネタも多かったのですが、想像して楽しく拝読できました。 とてもいい時…
[一言] ふたりのやりとりが楽しげでとても癒されました。 名だたる武人の名前が登場しつつ、孫尚香の口から語られると何だか親しみのある存在に感じられますね。 イヤリングの出自にくすりとさせられました。 …
[一言] 孫尚香! そう言われて「レッドクリフ」のヴィッキー・チャオではなく、川本喜八郎の孫夫人の人形が浮かぶわたしです。 出てくる名前が大物揃いで、ニヤニヤしちゃう。レモンサワーを飲む曹操。張飛、孫…
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