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「この町に来るのも久しぶりだな。」
俺こと三条拓斗は数年前に住んでいた芽吹町の景色を見てそう言った。
小学生時代は芽吹町に住んでいたが、中学に上がる時に親父の異動に伴って他県に引っ越したんだ。
んで、俺は今年ここの近くの大学を受験し、通う事になった。
つまり、6年振りってワケだ。
両親から昔の家は引き払っていないからそこを使えと言われ、着替えや日常品をリュックやキャリーケースに詰め込んでゴロゴロと引っ張っていた。
「6年経っても全然変わって無いところもあれば変わってる所もたくさんあるな。ここも友達と遊んだ覚えがあるな。確か恵だったか。」
さて、久しぶりの我が家だ。中は人が住める状況なら良いんだがなぁ。
数年に1度は来ていたそうだが、外から戸締りくらいしか確認していなかったそうで、中がどうなっているか分からないと言われた。
俺は手先が器用なのでDIYくらいなら何とかなるが家の補修なんて無理なんだが?
不安を感じつつ意を決して中に入ってみると見た目上はホコリが積もっているだけに見えた。
「分からないぞ。この家は木造なんだから見えない所が腐ってて床が抜けたりするかも…」
独り言を言いつつ、とりあえずリビングに向かってみる。
ちなみにだが、両親は2人とも一緒にはいない。
今まで暇だったのに急に仕事が増えたらしく息子の引っ越しすら手伝えないほど締切が近いらしい。
普段温厚な親父が、
「あのクソ上司め!」
とブチ切れていたのがとても印象的だった。
母さんはそんな疲れきった親父の世話をしないといけないと言っていた。
親父の仕事が一段落したら2人で様子を見に来るらしい。
それまでにはこのホコリだらけの家を何とかしないといけないのだが、
「俺一人で出来るか?」