チューニング
「次に拳銃タイプね……」
「こちらも特徴としては先ほどと変わりませんが、どちらかと言えば取り回しの良さを考えた方がいいかもしれません」
「……見た目には違いがあるようには見えないわね」
私は銃に詳しくないから似たようなものにしか見えない。多分見る人が見れば全く違うのだろうけれど。
「こちらは12発発砲すると冷却が入ります」
比較的スマートな見た目の拳銃タイプを手に取る二戸。
「そしてこちらは9発発砲すると冷却が入ります」
もう片方はごつごつした大きめの拳銃だ。映画で見たことあるかもしれない。そのまま私に手渡ししてくれる。両手に持つとエージェントみたいでかっこいい、かもしれない。
「……こっちの9発の方結構重いのね。銃のことはよくわからないけど……いっぱい撃てる方がいい気はするのは気のせいかしら」
「マスターにとっては気のせいと言って過言はないと思います。一応より法力を込めやすく強力な弾を撃つことができますがマスターなら強力な弾を撃つのに補助はいらないかと。実弾を撃つこともないでしょうし……」
確かに話を聞く限り法力偏重装備で行った方が強みを生かせる気がする。
「と言っても使ってる途中でこちらを使いたくなるかもしれないですしマスターのいない時間に調整はしておきますね」
「手間をかけさせるわね」
「いえいえ。では、マスターが当面使う魔銃のチューニングを始めさせていただきますね」
そう言って機材から小瓶の様な何かをとってくる。
「これは?」
「マスターの法力を込めていただくとご不在の時でも調整ができるので。よろしいですか?」
「もちろん」
何かに法力を込めるのは割とできる方だ。ぐぐっと力を入れると小瓶の中が淡く青色に光る。
「……綺麗ね」
「お気に召しましたか?良ければ魔銃に細工をすることで光らせることも……」
「そ、そんなピカピカ光らせなくてもいいわよ。目立つし」
武器が目立ちすぎてもよくないでしょうし。
「では、こちらにお座りくださいませ」
小さなキャビンみたいな所に座る。前、イオナイドで入った体の計測器みたいだ。あの時と違って密閉はされないけれど。
「そしてこちらに手を乗せてくださいませ」
手すりに手を乗っけるとひんやりとした感覚が伝わってくる。冬場はものすごい冷たそうだ。
「これでどうすればいい?」
「そのままの体勢で座っていただければ後はこちらで調整いたします」
「ん、わかった」
座ってるだけだから急に暇になってしまった。二戸が魔銃をテーブルに乗せてキーボードを操作する。なんだか彼女たちが物理キーボードを操作しているのを始めてみた気がする。大体仮想ディスプレイのキーボードを操作しているし。
たまには彼女たちの横顔を見るのもいい。
「マスター、何かつけてほしい機能や要望はありますか?」
「そうねえ……一度使わせてもらった時に壊してしまったから丈夫な方がいいわね」
「なるほど……かしこまりました。丈夫な素材で加工した方が良さそうですね」
「私も法力を込め過ぎるのは良くないのは学んだから気をつけはするけどね」
二度も破壊するのは流石にやめたい。
「マスター専用の魔銃を作成し終わるまでのつなぎとは言え満足いただけるものを提供しますので、ご安心を」
「ありがとうね」
しばらくキーボードをたたく音だけが部屋に響いていた。窓から外を眺めたり二戸の横顔を眺めたりしていたらいつの間にか意識が闇に落ちていた。
「……スター。マスター、起きてください」
「んぁ……寝てた?」
「少しだけ」
「ごめん、起きてないとダメだよね」
うっすらと体の中身が調べられている感覚があったので起きていないと私の体をチェックできないのかもと思っていた。
「申し訳ございません。もう少しの辛抱を」
やっぱりそうみたい。
「マスターに使っていただくための弾倉用魔法の調整にもう少し時間がかかりますので」
「わかったわ」
どうせなら次から調整する時間には本でも読もうかしら。ロベリアを待たせすぎているかもしれないから後で謝っておかないと。
しばらくして、二戸がモニターの前から離れてこちらを見る。
「お疲れさまでした、マスター。一通りの作業は終わりました」
「ありがとう、お疲れさまね」
「いえ、お待たせして申し訳ありません。こちらも慣れない作業でしたので……」
少し伸びをするとぽきぽきっと体から音がする。
「私に手伝えることがあったら言うのよ?」
「かしこまりました。では、魔銃はこちらに掛けておきますね」
そう言ってラックに魔銃を立てかけてくれる。少し色がついていて無骨な感じがなくなっている。こっちの方が確かに好みかも。
「早く使いこなせるようにならないとね」
「少しでも問題や使用感に不満がございましたら仰ってください」
「うん。そうさせてもらうわ」
選考会には無事に間に合いそうでこれで一安心。練習にもさらに身を入れて取り組まないと。
「そうだ、しばらくここにいてくれるのよね」
「はい。調整のためにこれからしばらくはここでお世話になるかと」
「じゃあ、改めてよろしく。だね」
「よろしくお願いいたします」
選考会までもう少しだ。