武器選択
汗を拭いてちょっと休憩したところで帰る準備を済ませる。
「お疲れ様。今日はもう帰られるんですの?」
「あ、ロベリア。うん、今日はちょっと帰ってやることがあって」
「あら……じゃあ今日は私も帰りましょうかしらね」
「何かやりたいことあったの?」
ちょっと残念そうにするロベリアを見るのは珍しい。
「いえ……たまにはお茶にお誘いしようかと思っただけですわ。最近選考会の練習で忙しそうですしたまには息抜き……にはいいのではないかと」
「あー……」
確かに最近毎日のように選考会の練習で忙しかった気がする。とは言え今日は帰ったら魔銃を選んでチューニングしてもらう……空き時間に一緒にお茶を飲むくらいできるだろうか。
「その……ロベリアさえ良ければ私の部屋でお茶、する?」
「いいんですの?」
「用事って言っても部屋の中でするものだしたまには、ね?」
正直家具ばっか送られてきているし少しは彼女たちに使われないと実質貰ったようなことになってしまう。
「姉様!お待たせしました~!」
「あ、ちょうどよかった」
「どうしました?」
「今日、ロベリアが部屋に来るけど大丈夫?」
「大丈夫ですよ!」
即答だった。
「というわけだし……来ない?」
「是非、お邪魔させていただきますわ」
さっきと違ってちょっとだけ上機嫌に答えてくる。バッグを取って寮へ向かうことにする。せっかくだからエイリーンとノアも誘った方が良かっただろうか。
「ただいま~」
「おかえりなさいませ、ミア様、レイ様……と、ロベリア様まで……ようこそお越しくださいました」
「おかえりミア、レイ~!って、ロベリアさんだ~!」
ネイとセイラがいつもの通り出迎えに来てくれる。
「お邪魔しますわね」
「ゆっくりしていってね~!」
そう言って颯爽と私達の荷物を回収するセイラ。彼女もすっかり従者の仕事が板について来たみたいだ。
「そう言えばロベリアたちが送ってくれた家具、どんどん届いてるわよ」
「先ほど届いたものは設置しておきました」
そう言えばカーテンと敷物が変わっている。
「あら、もう届いていたんですのね」
「あんまり高級すぎるもの送られても困るわよ?」
「ええ、分かってますわ」
本当にわかっているのだろうか。少なくとも実家に置いてあった物よりは高級な気がするのだけれども。
「我が家においてある物よりは廉価なものを送らせていただいてますわ。その方が気兼ねないでしょうし」
ふふんとちょっとだけ自慢げにいう彼女。やっぱり住む世界がちょっと違う……。まぁ気遣いをしてくれただけでも嬉しいのだけど。
「にしてもエイリーン、ちょっといいもの送りすぎじゃありませんの?これとか、我が家にもありますわ」
「私からしたらおんなじくらい嬉しいわよ。友達からの贈り物なんてめったになかったもの」
「私くらいしかお友達いなくなかった?」
「も、もう少しいるわよ……ほら、あの……」
ヤバい、改めて考えると具体的に浮かんでこない。
「ほら、イオナ……とか」
言ってて大分無理があると思えた。
「イオナさんは従者というか仲間というかそんな感じじゃん」
「おや、マスター。おかえりになられたのですね」
ちょうどよく二戸が声をかけてきてくれた。答えに困っていたし、いい助け舟だ。
「あ、二戸。そう言えば魔銃の調整しなきゃよね」
「いえ、マスターがご歓談中なのであれば後ほどでも」
「こちらは気にしなくても大丈夫ですわよ」
お茶を嗜みながらロベリアはそう言ってくれる。
「みたいだし、早速お願いしてもいい?」
「かしこまりました。ではこちらへ」
久しぶり、と言っても数日ぶりだけど私の部屋に何か大きいものが設置されている。
「これがチューニングの装置でございます。こちらにラックも用意させていただきました」
五丁くらいはおけそうなラックがある。
「それで、どんな感じの銃を持ってきてくれたの?」
「今回は近中距離を二つ、遠距離を一つ、拳銃型を二つ持って参りました」
「多いわね……ありがとう」
「いえ、マスターがどのようなものをご所望か分からなかったので」
目の前に五つの銃を並べてくれる。将来的に競技以外でも使うのだったら各種一つずつくらいそろえておいた方がいいのだろうか。
「とりあえずは選考会で使えるものを持っておきたい……かな?」
「マスターは射撃と戦闘、射撃勝負の三つに出られるんでしたよね」
「ええ、大体そうね」
「となると遠距離の調整は必要ないでしょうか。一撃で決めるのであれば大丈夫でしょうが、狙撃勝負でもないですし近中距離で事足りるかと。改めて遠距離は仕立てさせていただきます」
「なるほど、分かったわ」
確かにいっぱい撃てた方がお得な気がする。
「となると、一丁ずつ選ぶ感じかしらね」
「どちらも持っていただいてもいいですが……使えるのは一丁ですからね」
見た目的に好きな方で決めてしまってもよいものだろうか。
「これってそれぞれ違いはあるの?」
「法力の消耗と冷却時間のような物の間隔が違いますね」
「なるほど」
「マスターは法力の消耗は気にしなくてもよさそうですから、冷却時間の間隔でしょうか」
「そうねぇ」
「こちらはおおよそ40連射すると冷却が入ります。2秒ほどでしょうか」
そう言って片方の銃を指さす。私が見た目で良さそうだな、と思った方だ。
「もう片方はおおよそ60連射すると冷却が入ります。3.5秒くらいでしょうか」
「なるほどね……。実際そんなに連射する必要はあるの?」
前にお嬢様二人が連射記録で自慢し合っていたけど、実際の戦いでそんなに撃つことはあるのだろうか。
「……マスターならあまり連射の必要はないかと。法力効率を無視した弾が撃てますから」
「だったらこっちの方が良さそうね」
最初にピンと来た方を指差す。
「かしこまりました」