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翌朝、いつもより少し早く目が覚める。いつもなら私が起こされているのに珍しいこともあるものだ。多分原因は私の上に半分乗っかっている妹だろう。ちょっと圧迫感があるおかげで眠りが浅かったのかも。彼女を起こさないように起きようと思ったが足をしっかり絡まれていて動けそうにない。

「……まぁネイが起こしてくれるかしらね」

ネイにはレイの部屋で寝ていることは伝えてあるし時間になったら起こしてくれるだろうしそれまではゆっくり寝ていよう。そうして目を閉じるとまたすぐに思考が闇に落ちる。

次に目を覚ました時には胸元を触る感触があった。目を開いてちょっと胸元を見てみると妹のしなやかな指が私の胸をしっかりとホールドしていた。たまに指がちょっと動いてくすぐったい。

「レ、レイ……?ん……」

「姉様ぁ……」

どうやら彼女はまだ眠っているみたいだ。まぁネイもまだ起こしに来てないし、私の体を触ってくるのもいつも通りと言えばいつも通りだからもう少し寝かせてあげよう。

十分ほど妹の顔を眺めていたらやっと目を覚ましたようで顔を上げてこちらを見る。

「姉様……おはようございます……」

「おはよう、レイ」

そのまま私の太ももの上にまたがるように体を起こして目をこする。

「しっかり眠れた?」

「あ、はい……。なんだか姉様と一緒に料理してる夢見ました……」

「料理?楽しそうね」

「生地をこねていたのは覚えてるんですけど、何を作ってるかが……」

「あ、ああなるほど」

だからたまに私の胸をちょっと潰すような力が入ってたのかと納得する。

「でも、姉様と一緒のおかげでしっかり寝られた気がします」

「ならよかったわ」

そう言って私の上から降りて、机においてある櫛を取ってくるレイ。

「姉様、後ろ向いてください。髪梳かしますね」

「いいの?ありがとう」

後ろを向いて髪を梳いてもらう。いつもはネイにやってもらっているけどたまにはレイにやってもらうのもいいかも。鼻歌を歌いながら私の髪を梳く彼女が楽しそうだし。

「出来ました!やっぱり姉様の髪、サラサラでいいですね。触っても見ても楽しいです」

「レイだって綺麗じゃない。今度は私が梳いてあげるわ」

レイをベッドに座らせて彼女の綺麗な黒髪を梳いてあげる。私と同じくらいの長さだし合わせてくれているのかも、なんて考えてしまう。もし事実だったら嬉しい。

「よし、出来たわ」

「ありがとうございます!」

「ミア様、レイ様、お食事の用意できましたがお目覚めですか?」

ちょうどよくネイが扉をノックしてくれる。

「今行くわ~」

彼女の手を取って一緒に朝ごはんを食べに行く。


朝ごはんを食べ終わって学院に行く準備をしていたら後ろから二戸が話しかけてきた。

「マスター。少しお話よろしいですか?」

「あ、二戸。おはよう。もちろんいいわよ」

「魔銃チューニング用の装置、設置無事に終わりました」

「あ、ほんと?ありがとう!お疲れ様ね」

一晩で終わらせてくれるとは思わなかった。私達の睡眠を妨げないように学院に行っている間にやってくれているものかと。まさか静かに作業を終わらせてくれるとは。本当に彼女たちは優秀だ。

「それで、いつ魔銃をチューニング致しますか?」

「あー……そうね、学院に行かなきゃいけないから帰ってからかしらね」

「かしこまりました。お待ちしておりますね」

「急いで帰ってくるわね」

「ごゆるりと学院生活をお楽しみくださいませ」

「姉様~!そろそろ行きますよ~!」

玄関の方から妹の声が聞こえる。ブレザーを羽織って、ネイから鞄を受け取る。

「行ってらっしゃいませ、マスター」

「行ってらっしゃいませ、ミア様」

「行ってきます」

二人から見送られつつ、正確に言えばセイラも玄関で手を振ってくれたが、レイと一緒に下まで降りてノアと合流しに行った。

その日の授業はいつもの通り慣れない魔法実技をこなしつつ、選考会への練習を行った。

「うん、こんなとこね」

エイリーンとレイと組むことになったから連携を取りつつ戦うために、一番弱いと思われる私の鍛錬をしてもらっていたのだが足が痛いし手も痛い。二人ともやっぱり強い。魔法を使うのも許可されているから私みたいに使い方が限定的な人間だと彼女たちみたいに器用な子に敵わない。

「二人とも……本当に強いわ……」

「姉様だって十分に強いですよ」

「そうそう!」

「慰めはいいわよ……このままじゃ足を引っ張っちゃいそうだわ」

純粋な剣の腕は二人にかなわないからやっぱり私は有り余る法力を使って自身の強化をして一撃で相手を仕留めた方が良さそうな気がしてきた。

「そんなことないって。私とレイと間髪入れずに戦ってまだ立っていられるんだから、実質ニ対一で戦ったみたいなものよ?」

「でも、剣の腕ではやっぱりだいぶ劣っていたわ……戦ってよくわかった気がするもの」

「……ちょっとミア、こっち見て」

ちょっと弱音を吐いてしまったら急に両手でほっぺたに手を添えて真剣な目でこっちを見てきた。

「な、何?」

「ミアはね、自分を卑下しすぎ」

「そ、そんなこと……」

「貴女は十分力を持っているわよ。私達と釣り合うくらいに戦えているんだから。自分の力を見誤ってしまうのは危険よ、正しく認識しないと不幸せになるんだから」

「……ごめん」

「これからは私なんて、みたいな感じのこというの禁止ね。少なくとも明星戦が終わるまで。分かった?」

いつもと違って諭すような、真面目な感じのエイリーンの言葉がまっすぐに突き刺さる。

「そうですよ、姉様!自分のことを貶める必要なんてありません!最高の姉様なんですから!私が保証します!」

「わかった……。自分でもちょっと卑下しすぎたと思ってる……」

「わかったなら良し!」

よしよしと頭を軽く撫でられて解放される。なんだかお姉ちゃんみたい。


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