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踏み出す一歩

「ほらほら、とにかく練習しましょ?撃ってみるの、楽しいでしょ?」

「否定はしないけれど……」

背中を押されてまたスコープを覗く。さっきより法力を込めないで引き金を引いてみる。さっきより小さい、と言っても一般タイプよりは大きい音を立てながら的の端っこに穴が開く。続けて引き金を引くと後ろの土壁に当たる。やっぱり百発百中と行くにはまだまだ練習しなければいけないみたいだ。だけどちょっとだけ法力制御はうまくいったような気がする。コツを掴めたので後は回数を重ねれば……。

「ちょっと左側に偏ってるわね。もうちょっと右側を狙ってみたら?」

「やってみるわ」

言われた通りにちょっとだけ中心から右側を狙って撃ってみる。引き金を引くとさっきより中心に近いところに穴が開く。

「ほんとだ……すごい」

「一発で成功させるほうがすごいわよ。本当に才能あるんじゃないの?」

「流石にこれだけうまくいくと本当に競技に参加してみたくなってくるわね……」

「するべきよ!もったいないわ!何なら申し込むまでずっと監視しようかと思ってたくらい」

この皇女なら本当にやりかねない。四六時中付きまとわれそう。

「貴女が言うと冗談に聞こえませんわね」

「あら、やってもいいのよ?」

「あのねぇ……」


「最後、これ使ってみる?」

拳銃型の魔銃を持ってくる彼女。しばらく狙撃タイプを撃っていたからそろそろ別のタイプを撃ってみたくなっていたところだ。

「借りるわね」

彼女から受け取ったそれは思ったよりずっしりとした重さを手のひらに伝えてきた。とりあえず昔ドラマで見たような構え方をしてみる。

「結構様になってるわね。どこで立ち方覚えたの?」

「うーん……勘、かしらね」

どうやら間違ってはいないようだ。法力を込めてそのまま引き金を引く。何回か発砲して半分くらいは的に当たったみたいだ。

「当てるの難しいわね」

「最初でこれだけ当たれば十分だと思うけど」

「そう言うものなの?」

「私なんて最初はろくに当たらなかったわよ」

意外だ。何でもそつなくこなすイメージなのに。

それからしばらく三種類の魔銃を撃ってみた。回数を重ねるにつれ段々威力の調整もできるようになってきたし、的への命中率が上がってきた。エイリーンも最初の方はアドバイスをしてくれたが段々と後ろから腕組んで見ているだけになった。的の後ろを焦がすことも無くなってきてさっきより上達が見てわかるようになっている。

「ミア、結構撃ってるけど疲れない?」

「んー……。まだあんまり疲れないわね」

「やっぱり法力量が多いと疲れにくいのかしらね」

ちょっと隣の方を見てみるとどうやら撃っているのは私だけだったみたいで皆休憩していた。

「なんだ、みんな休憩してたのね」

集中していたので全く気付かなかった。

「気づかないくらい集中してたのね。やっぱり素質あるわよ」

「姉様の撃つ姿かっこいいです!」

「持ち上げても何にも出ないわよ……もう」

「それで、選考会に申し込む気にはなった?」

飲み物を渡してくれるついでにエイリーンが聞いてきた。

「そうねぇ……みんなが褒めてくれるしその気になったと言えばなったかも」

「大丈夫よ、あれくらい撃てれば新人戦の相手なんて目じゃないわ」

「なら、申し込もうかしら」

上手く乗せられた気もするけどダメだったら応援に回ればいいだけだし、そう考えると気楽なものかもしれない。

「そうなると……魔銃を調達するためにどの種類で作ってもらうか決めないとね」

「ちなみにこの大きさの魔銃は所持できないと思っていいわ」

そう言ってロベリアは拳銃型のそれを手に取る。

「そういえば隠しやすいからダメなのよね」

「雑に言えばそうね」

「そもそも競技ではほとんど一般式が使われててたまに狙撃タイプが使われる、ってところかしら」

「一般式が主流なのね」

「便利だもの。よく言えば万能に中距離から長距離まで撃つことができるから。競技に出るなかでも法力量に自信あるけど弾を外しそうって子は狙撃タイプを持ってくる子もいるわね」

そう聞くとやはり一般式の方が良さそうに感じる。始めから無駄にとがらせる必要もないだろうし。ただ、こういう長物は見た目がちょっとカッコいいのでそこで迷ってしまう。結局自分が気に入ったものの方が思い入れも入って上達しそうだし。

「ミアだったら法力量は気にしなくて良さそうだし狙撃タイプでも十分に使えるかも。ちょっと重いけど……まぁ気にならないでしょ」

「むしろさっきみたいな事故が起こらないように少し大型で頑丈な方がいいかもしれませんわ」

確かにさっきみたいなことをしょっちゅう起こしていたらいくらお金があっても足りないだろうし狙撃タイプの方がいいのかもしれない。二人の話を聞いてると両方に利点があって迷ってしまう。

「……どっちがいいのかしらね」

「それはミアが決めることだけど……気に入ったほうでいいんじゃない?」

「私としては狙撃タイプにして中身を調整する方がいいと思いますわよ」

二人の意見を貰ったうえで悩む。イオナにもどっちが合うか聞いてみようか。自分で決めた方がいいのは分かっていてもつい人の意見を聞いてしまう。自分で言うのもなんだけどもうちょっと主体性が欲しいものだ。

「悩むのもいいけど、選考申し込みも近いし選考会もそう遠くないんだから早めに決めるのよ?」

「そうね」

「失礼します。皆様、そろそろお時間です」

とりあえず申し込むのを決めたところでレディシアさんが帰宅を告げに来た。

「あら、もうそんな時間?早いわね」

「じゃあ片づけないと……」

「ああ、そこに戻しておくだけでいいわよ。後は片づけさせておくから」

「そう?わかったわ」

とりあえず使った魔銃をもとあったラックに掛けなおす。あっという間に終わったので先に出ててというロベリアの言う通りに射撃場を出る。外はすっかり闇に染まっていた。

「お先にお乗りになってください」

促されるままに馬車に乗る。しばらくしたところでロベリアも乗ってきた。扉が締められて

ゆっくりと動き出したところでエイリーンが口を開いた。

「みんなどうだったかしら。今日、楽しかった?」

「ええ、いい経験をさせてもらったわ」

「はじめての感覚でしたけど、楽しかったです!」

「楽しかったけどちょっと疲れましたね」

「そうね、三人とも今日は帰ったらゆっくり休むといいわ」

うんうんと頷きながら満足そうにそう言う。

「そうそう、ミアは魔銃の調達忘れちゃだめよ」

「分かってるわ」

帰ったらさっそくイオナに相談してみるつもりだ。


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