はじめての感触
「これが……」
「そ、魔銃よ」
なんというか、驚くほど想像通りの見た目だ。自衛隊とかがテレビで持ってるようなものに似ている気がする。詳しくないからわからないけど。
「いくつか種類があるけどどれが使いたい?」
「種類?」
「例えば、片手で撃てるこれ!」
そう言って彼女はラックの隣の机に置いてあった拳銃のようなものを掲げる。
「ちょっと!?そんなのまで調達してきたの!?」
「正規の手順は踏んでるから大丈夫よ?」
「本当ですわよね……」
ロベリアは何やら頭が痛そうだ。
「かっこいいでしょ、これ」
「かっこいいけど……ロベリアがああなってるのはなんで?」
「単純に規制が厳しいのよ。隠し持ちやすいから普通は所持しちゃダメなんだけど……そこはコネの力よね」
「あぁ……なるほど」
「で、この魔銃はさっきも言ったけど隠し持ちがしやすい代わりに威力は控えめで魔弾の種類も少な目ね。と言っても射手の法力量によって威力も持続時間も変わってくるんだけどね」
「弾に種類もあるのね」
「ええ。魔銃はこの変更用の弾倉を交換すると替えられるのよ。例えば貫通を狙う魔弾とか爆発を狙う魔弾とか実弾を撃ちだすための弾倉とか。替えるだけで法力を込めれば撃てるのは便利よね」
「実弾はめったに使われないけどね。効率悪いし……精々魔法に対しての防御が強い目標に対して使うくらいかしら」
法力が火薬と弾の代わりになったイメージだろうか。
「撃ってみるとこんな感じ」
そう言って彼女は的に向かって発砲する。発砲すると言ってもそこまで大きい音は出なかった。発報とほぼ同時に的が小さく爆発して粉々になった。
「すごい……」
「慣れるとこんな感じに連続で撃つこともできるわ」
そう言って数発連続で発砲する。さっきまで的があった場所に当てていく。命中精度が高い。
「つぎ、これが一番流通してるわね。一般式の銃」
今度はラックから一丁引っ張り出してくる。
「これも基本的には一緒ね。弾倉を交換して撃つわ」
「構えが様になるわね……」
「そう?ありがと。撃つとこんな感じよ」
今度は爆発しない弾だったようで的を貫通して後ろに当たる。
「一つ目の特徴として法力消費量が大きいけど連続射撃もできるのよ、こんな感じで」
そう言って発砲すると連続で弾が当たって的が砕ける。
「ふぅ……まぁずっと撃ってると疲れるから30発くらいが一回で行けるところかしらね。私120発まで耐えたことあるけどね!」
自信満々そうに胸を張る。普通の四倍も耐えるとは実際すごいように思える。
「私だって150発まで耐えたことありますのよ!」
対抗してロベリアまで張り合い始めた。
「二人ともすごいのね……」
「最後はこれ!狙撃タイプね!」
一番サイズが大きい魔銃だ。かっこいい。
「連続で撃てないし大きいしで持ち運びには不便なんだけどとにかく威力が高いのよ!」
「ものによっては人だけじゃなく建物を撃つものもありますわね」
「流石にそこまでの物をここで撃つと洒落にならないから対人用を持って来たわ」
「貴女もそれは考えるんですのね……」
「当たり前でしょ」
そう言いながら机を支えにしつつ発砲して的を破壊する。他の魔銃より音が大きめな気がする。
「大まかにはこんな感じね!色々弾の種類も用意したから何でも言ってちょうだい!質問はある?」
「うーん……特にはないけど、結構光は目立ちそうね」
さっきから発砲するたびに結構わかりやすく光ってはいた。あれを減らすような魔銃もあるのだろうか。
「まぁ多少は目立つかも?火薬式の銃に比べれば音が小さくて光が出るって感じかしら。言ってもあんまり光は気にならないし先端に減光器付ければマシになるわよ」
「そう言うものがあるのね」
「とりあえずみんなはどれ撃ってみたい?最初はよくある一般式からにする?」
どれも面白そうだけど、最初は姿勢とかも教えてもらいたいしコツをつかみたいので言われたとおりにしようか。
「ええ、そうするわ」
「私もそうします」
「じゃ、じゃあ私も……」
「じゃあミアには私が教えるわね!」
「……じゃあレディ、レイに撃ち方を教えてあげてちょうだい。私はノアに教えるわ」
「かしこまりました」
そうしてエイリーンに引っ張られて私も射撃レーンにつく。
「結構重いのね」
剣を持つのと同じくらいの重さがある。
「すぐ慣れるわよ。構え方はこんな感じに肩に当てて……」
「こんな感じ?」
「ええ、いい感じよ」
ずっとこの体勢をするのは辛そうだ。早く慣れたいところではある。
「で、どうやって撃つの?」
「基本的にはこの魔銃を杖のようなものだと思って法力を流し込むといいわ」
杖のような物……こんな感じだろうか。
「あとは引き金を引けば弾が出るわ。最初は慣れるために連続射撃はしないようにしてあるわ」
言われるがまま引き金を引く。発砲音とほんの少しの反動を感じたと思ったら的にへこみができる。
「あら、ちょっと法力量が足りなかったかしらね。もうちょっと込めてみるといいわよ」
もうちょっと込める……こんな感じだろうか。引き金を引くとさっきよりも大きい発砲音と反動が感じられる。的の方を確認すると後ろの土壁に当たったみたいで着弾点に土煙が立っている。
「んー……もうちょっと上の方かしら?」
なかなか当てるには難しい。こんなにちょうどよくならないものか。