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魔銃と対面

その日は朝からちょっと気持ちが浮かれていた。別に悪い意味ではない。きちんと授業にも出席したし課題もそれなりにこなした。それはそれとして魔銃を撃ってみたいという興味がすごかっただけなのだ。

「姉様朝からそわそわしてますね」

授業が終わった後に妹からそんなことを言われた。端から見てわかるくらいそんな分かりやすくうきうきしていただろうか。

「……そんなにわかりやすかった?」

「私にはわかりました!」

「レイは私のことよく見てくれてるのね」

「もちろん見てますよ!えへへ……」

自信満々に言い切ったと思ったらちょっと照れくさそうにする。守ってあげたくなる。普段は私が守られてる方だけれど。

「お疲れ二人とも~っ!」

後ろから急に衝撃が来る。どうしてこうこの子は静かに声をかけてくると言うことをしないのだろうか。別に彼女らしいのでいいと言えばいいのだけれどちょっと苦しい。

「お疲れさま……エイリーン」

「あら?元気ないわね」

「元気ないわけじゃないわよ……!ちょっと首にかかってる腕が緩めばいいと思ってるだけ……」

「あ、ごめんなさい。力加減間違えちゃったわね」

そう言ってパッと首から腕を離してくれる。やっと息がしやすくなった。

「姉様、大丈夫ですか?」

「大丈夫よ。いつものことだし」

「失礼ね、いつもは苦しくないようにしてるわよ!」

「もっと普通に声をかけてきなさいよ……」

「だってそれじゃあ面白くないじゃない。ねえ?」

「私に振らないでくださいな」

いつの間にか来ていたロベリアはやれやれと言う風にしながら首を横に振る。

「じゃあ、ノア。そう思うわよねぇ?」

「え?あ、そうですね?」

「いまきたばっかりのノアに聞くんじゃないわよ。困ってるじゃない」

「すいません……」

「別にノアが悪いわけじゃないんだから謝らなくていいのよ」

「そうよ!もっと胸を張っていいのよ!」

「エイリーンはもっと謙虚になりなさい」

「皇女なんて謙虚じゃやってらんないわよ」

いきなりもっともらしいことを言う。急に正気になるのはやめてほしい。


「そんなことはどうでもいいのよ!早く撃ちに行くわよ!準備はできてるはずだから!」

私とレイの背中を押しながらそんなことを言う。

「押さなくても大丈夫だから……!ちょっと!?」

「早くしないと日が暮れちゃうわよ?」

「ちょっと!私がいないと入れないんですから先に行かない!」

ぐいぐいと押されながらロベリアの怒る声が聞こえる。声色が冷たくないから怖くない保護者みたいなふうに聞こえる。実際この五人の中だと保護者的立ち位置にいるのは彼女だろうけど。


「って……馬車じゃない。そんな遠くに行くの?」

校舎を出てしばらく押さえるがままに歩いているといつもお嬢様二人が使っている乗降場に着いた。

「そんなに遠くはいかないけれど歩くにはちょっと……って言う感じですわね」

「私は行けるけどねぇ」

「貴女と一緒にしないでくださいな……」

「皆様お待ちしておりました」

二人の言い合いのような何かを聞いていると馬車からレディシアさんが降りてきた。いつものクールそうなかっこいいメイドさん。

「五名で間違いないですか?お嬢様」

「ええ。大丈夫よ」

相変わらず華美過ぎない、シックな感じの高級感ある馬車だ。前に乗ったのとは違う気もするけれどいったい何台持っているのだろう。

「ほら、早く乗りなさいな」

「あ、はい」

先に乗ったロベリアがノアに手を差し伸べる。ちょっと戸惑いつつもその手を掴んで馬車に乗る。

「あの子あんなに優しかったかしらね」

「仲良くなったってことじゃないの?いいことじゃない」

私達もその後に続いて乗り込む。レディシアさんが扉を閉めて少しすると、馬車が動き始めた。小窓から外を見ると普段より高い視点で街を見ることができてちょっと新鮮だ。知ってる土地でも高速バスみたいな特別感のある車両で少し高い場所から見下ろすだけなのにワクワク感のある、みたいな感じ。……ちょっと独特な感性過ぎたかもしれない。

「馬車って新鮮ですね」

「そうね。私達は普段乗らないし」

「毎日乗ってると案外飽きるのは早いわよ」

「そう言うものかしらね」

こんな立派な馬車に乗って飽きたとか一回は言ってみたい。


ちょっと窓から外の景色を見たり皆と話しているうちに馬車が止まった。

「もう着いたのかしら」

「ええ。言ったでしょ?そう遠くないって」

馬車から降りると前に見た別荘ほどではないけれどクランの建物くらいには立派そうな建造物が目の前に見える。

「さ、入るわよ。今日は貸し切りだし」

「ここで撃てるの?」

「ええ」

建物の中に入ってロベリアが手際よく受付を済ませてくれる。

「こっちね。別に地下の射撃場使ってもいいのだけれどせっかくだし上を使いましょ」

言われるがままに彼女についていく。魔銃との対面が楽しみだ。

「さ、荷物は適当にそこらへんに置いちゃっていいわよ」

射撃場と書かれたプレートの掛かっている部屋に入ると奥に広い部屋が広がっていた。よく想像するような射撃場だ。荷物を置いてまわりをきょろきょろ見ていると何かが運び込まれてくる。

「今日は数種類の魔銃を用意したからいろいろ使ってみるといいわ」

そう言ってエイリーンが運び込まれたものに掛かっていた布をバサッとめくる。そこにはラックに掛けられたシンプルな見た目の銃が置いてあった。

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