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新たな行事の香り

そうして、少し時間が流れた。そろそろ学院の生活にも慣れてきて、制服の違和感がなくなってきた頃。

「じゃあ、行ってきます」

「いってらっしゃ~い!」

「行ってらっしゃいませ」

「待ってください姉様~!」

いつものように妹と寮の一階に降りていく。すっかりこのやり取りにも慣れてしまった。

階段を降りたところに時計をちらっと見て時間を気にするいつもの横顔が待っている。

「お待たせ」

「いま来たとこだから大丈夫。おはよう、二人とも」

「おはよ、ノア」

すっかり私達と打ち解けて言葉が砕けた感じのする彼女。同じ寮に住んでいるので一緒に行くのが当たり前になっている。ほとんど毎日この時計の下が集合場所だ。

「今日の授業は……」

「魔法実技の後は……教室集合?」

「何するんでしょうね?姉様」

「さぁ……」

そう言えば昨日何かあると聞いたかもしれない。詳細は全く覚えてないけれど。

「もうすっかり暖かくなってきたわね」

元の世界で言えば5月くらいの陽気だろうか、肌寒い日がなくなってきて夏を感じ始めるころ。

「お布団から抜け出しやすくなって良い季節ですね」

「ノアもそう言うことあるのね」

てっきり私達の中ではしっかりしている方だと思っていたのでふとんむしになっている想像をして笑ってしまった。

「寒いのはやっぱり苦手なので……」

「姉様だって最近まで起きるのに時間かかってましたけどね」

「レイがすんなり起きられるのがすごいのよ」

本当にこの妹は同じ家で育ったとは思えないくらい一人でいろいろできる子だ。何なら一人暮らししても規則正しい生活を送りそうだ。

「楽しそうね!何の話してるのかしら!」

後ろから突然の衝撃を受けたと思ったら聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「最近暖かくなってきた、って話よ」

「確かにそうね!」

「急に走っていくんじゃないわよ……!」

しばらくすると後ろからほんの少し息を切らしながらロベリアが追いついてきた。

「良い運動になっていいじゃない」

「そう言う問題じゃないわよ!はしたない……」

「確かにスカートなんだしあんまり走らないほうが……って言ってるわね、毎回」

思い返すと数日に一回はこんなやり取りが発生している。

「誰も見ないわよ」

「貴女仮にも一国の皇女でしょうに……」

ため息をつきながらそうこぼす。私も彼女に同意見ではあるけどこの子はもうこういうものかもしれない。

「そんなことより早く行かないと授業始まるわよ~?」

しれっと先に進んでそんなことを言う彼女。近くの時計を見上げると確かにぎりぎりの時間になっていた。いつの間にあそこまで……。

「ちょっと待ちなさいってば!」

慌ただしく始まる一日。こんな生活も案外悪くないかも。

……やっぱりもうちょっと物静かでもいいかも。


ギリギリ最初の授業に間に合って何とかその日の目標をこなした。私の友人たちにはだいぶ苦労を掛けてしまったかもしれない。早くに課題を終わらせて休んでてもいいのに私にコツを教えてくれた。やっぱり魔法を使うのはちょっと……いや、大分苦手だ。身体強化とかなら得意なのに。

「まぁまぁ、やっていくうちに慣れるわよ」

「そうですよ、姉様。気を落とさないでください」

「あなた達とまではいかなくてももうちょっと早く終わらないかしらね……」

机に突っ伏して同化しかけていると誰かが頭をポンポンと撫でてくれる。

「でも、戦う分には強いし大丈夫じゃないの?」

「出来ることは多い方がいいじゃない……」

「大丈夫です!私が姉様を支えますから!」

この子はほんとにいい子なのだがたまにはいいところを見せたい。ずっと頼ってたんじゃ姉の威厳が……。

「ほら座れ座れ~」

ちょっと貴族らしからぬ体勢になりかけてたところでレーヴェ先生が手を叩いて休み時間の終わりを告げる。教室が静かになったところで私も顔を上げる。

「よし、静かになったな」

「とりあえず今配ったものを見るんだ」

すると、皆の目の前に通神書が現れる。どうやら明星戦について書いてあるようだ。

「これ、先輩が言ってたやつですね」

「ね。思ったより競技数多いのね……」

「というわけで明星戦には1年だけが出られる新人戦がある。事実上の各校新入生自慢大会だな。そのために学院内選考を行う」

「選考ですって。楽しみね」

既に皇女殿下は口元をニヤつかせて楽しみそうにしている。

「この通神書に書いてある通り数日後に選考の申し込みが始まるからそれまでに出ておきたい競技を決めておけよ。代表になれたらそれなりに成績に反映されるから気張るんだぞ。狭義の体験がしたければ、できるものは試験場に用意してある。では解散!」

そう言って先生はいなくなってしまった。

「どれに出ましょうか……」

「姉様!一緒に申し込みませんか?」

「一枠を奪い合うのも楽しそうね……」

先生がいなくなったと思ったら私の机の周りにレイたちが集まってくる。まぁ他のところでもグループごとに集まっているし似たようなものか。

「一緒にって言っても、枠が少ないから同じ競技に出られるってわけじゃないのよ?」

「でもこの競技は複数人通りますよ!」

確かに彼女の指さす競技は複数人通る。

「私と姉様なら他の人なんて目じゃないです!」

「じゃあ私もそれ、参加しようかしら」

ふふんと自信ありげにエイリーンが入ってきた。好戦的な炎が目の中に見えたかもしれない。選考が始まる発表があったと思ったら早々にカオスな展開になってきた。

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