図書館探索
食堂からちょっと離れたところに図書館はあるみたいだ。流石この国でも指折りの学校。蔵書の数はとんでもないようで外から見てもその大きさが桁違いであることが分かる。
「ここがこの学院の図書館よ!」
重厚な扉を開けるとふわっと紙とのりの匂いがした。
「外から見てわかってましたけど……天井高いですね、姉様」
「ほんと、そうね……」
前の世界で行ったことのある図書館でもここまで大きいところはなかった。ゆうに天井まで20m以上ありそうだ。
「まぁ、案内すると言ってもあんまり大きい声で話してると番人に怒られるからこっそり全体を見せていくわね」
アル先輩はそう言って歩き出した。入り口付近の吹き抜けからそう遠くない場所にもう本棚があって本が所狭しと詰め込まれている。どれもハードカバーの本ばっかりだ。辞書だろうか?
「まずここら辺はあんまり最初は来ることはないだろうけど古書ね。この国の歴史を中心に私達魔族の歴史とか帝国の歴史もある程度詳しくまとめられてるわ」
「こんなに歴史書ってあるんですのね……」
「一人がずっと書いてるわけじゃないからね。たくさんの著者がそれぞれの時代と視点でまとめてるから意外と面白いわよ?暇なときに読んでみるといいわ」
「先輩、結構図書館に来られるんですか?」
「この子私とつるむようになるまでず~っと図書館に行ってたわよ~」
「ちょっと……!メア!」
メア先輩を叱った声がちょっと大きくてちょっとびっくりしている先輩がかわいく見えた。
「そんなに騒ぐと番人が来ちゃうわよ~?」
「貴女が余計な事言うからでしょ……!!」
「ま、まぁ図書館によく行くのは学院生として立派なことですしね、姉様」
「それは……その通りね」
フォローのつもりでこっちにも球を投げてくるのはちょっとやめてほしい。
「仕方ないでしょ……。学院に入学したての時なんて当然だけど知り合い一人もいなかったんだもの。暇だったから本を読んでいただけよ。ってそんなことはどうでもいいわ、次行くわよ次!」
話しwぶった切って移動を始めるアル先輩。本の森でその背中を見失わない様についていく。
「ここは多分授業が始まったら来ることになると思うわ」
「……背表紙を見ると、魔法とか野外での生き残りの本ですね」
「こんな本まであるのね」
適当にそのあたりにある本を手に取ってパラパラとめくる。魔法の基礎理論が書いてある本だった。
「こっちは普通に計算の本ですね」
「あら、こっちは人体の仕組みの本だわ」
「一般科目から魔法の授業まで色々あるからね。困った時は大体ここに来ると説明してくれる本はあるはずよ」
正直普通の科目なら高校レベルまでの知識で充分そうだがサバイバルとか魔法の知識に関しては家である程度学んだくらいのレベルしか知らないからここで本を読んで補強できそうで助かる。
「姉様、今度この本の内容を教えてください!」
「ん。もちろんいいわよ」
レイが数学関係の本を持ってそう言ってくる。
「代わりに私は……魔法の理論でも教わろうかしらね」
「お任せください!」
私は魔法の才能がなさすぎるのでいまいち理論を分かっていない説がある。レイなら得意だし分かりやすく教えてくれそうだ。
「まぁ、授業が始まったらゆっくり来るといいわ。あんまり今色々見ても持って帰るの大変だし。次、行きましょっか」
また、彼女の背中を追う。今度は段々と小説サイズの本が多くあるコーナーに入ってきた。
「ここは小説の置いてある場所よ。面白い本がいっぱいあるから是非読んでみて」
「アルはね~……そうそう、この本が好きなんだよね」
メア先輩がとある本を渡してくる。表紙がいかにも恋愛小説っぽい可愛らしい本だ。
「……夕暮れ空の、恋模様?」
「そうそう!意外とかわいいところあるよねぇ」
「メア……!そう言うことしなくていいから!!」
「痛ったぁ……!」
アル先輩にちょっと強めに叩かれている。頭を押さえていて本当に痛そうだ。
「私あんまりこういう本読んだことないから読んでみますね」
「……良い本よ。是非読んでみてほしいわ」
ちょっと照れながらもしっかりと本を薦めてくる先輩。実際あの家で恋愛小説なんて読む機会が本当になかったからちょっと新鮮だ。
「姉様、こういう本も興味があるんですか?」
「普段あんまり読まないもの」
「あー……じゃあ、是非これも読んでみてください!」
そう言って本棚からいくつかピックアップして渡してくれる。
「ありがとう、レイ。読んでみるわね」
簡単に表紙を見ると全て姉妹物の本ばっかりだ。姉妹がいる身としては結構主人公に共感できそうで面白そうだ。
「結構いっぱいになっちゃったわね……。先輩、この本って借りられるんですか?」
「ええ。もちろん借りられるけど……、貴女達は登録されてるのかしらねもう」
「とりあえず行ってみればいいんじゃない~?」
「そうね。こっちよ」
少し歩くとちょっと広めのカウンターと読書スペースが現れた。
「ねぇ、新入生ってもう本借りられるのかしら」
「はい、借りられますよ。こちらの仮登録用紙にご記入ください」
そう言って一枚の紙を渡される。名前と借りる本の題名を書くようだ。
「これを書けば借りられるみたいね」
「ありがとうございます」
「私も一冊借りるわ!」
「私も」
隣でロベリアとエイリーンも一緒に記入を始めた。ちらっと隣を見ると小説を借りているみたいだ。
「書き終わった?」
「ちょっと待って……ん、終わった」
エイリーンに用紙を渡してそのまま受理される。何のことはなくこのまま借りられた。
「ちょっと荷物が増えちゃったね、袋あるけど使う~?」
「あ、借りたいです」
「じゃあこれ、どうぞ~」
「ありがとうございます」
可愛い刺繡のついたトートバッグを借りる。見た目の雰囲気とは変わって可愛いものを持っている不思議な先輩だ。