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新たなつながり

森の入り口のような場所まで来たが結構鬱蒼としていて、あまり明るい場所ではない。

「どこに鉱石があるのかしらね」

「任務の要綱に書いてあった情報だと細道の近くに多くの洞穴があってその周りにあるそうです」

「なるほど。じゃあとりあえず入ってみようか」

剣を抜いて森の中に入っていく。ひんやりとした空気が足元を抜けていく。

無数に細道があるようで馬車一台くらい通れそうな幅のものから歩くのにも苦労しそうな獣道まであった。

「ミア様、獣の足跡がございます。近くに何かいるかもしれません。お気をつけて」

ネイの言う通りいくつかの大きすぎない足跡が奥に続いている。しばらくその足跡をつけながら細道を進んでいくと確かに洞穴のようなものがある。

剣をいつでも振れるように構えながら洞穴に近づいていく。ネイも長刀(ながたな)を構えながら後ろからついてくる。

「今のところ何もいなそうだけど……」

洞穴の入り口についたところで、足元に鈍色の目標物が半分埋まっているのに気づく。

「これ……かな?」

「そのようです。ミア様」

早速その目標物を引っこ抜いてネイに渡す。いくつか採取して必要量くらい取れた頃にガサガサっと近くの茂みが揺れる。

そしてイノシシのような獣が三匹躍り出てくる。三匹ともこちらを見て、低く唸り声をあげている。今にも襲ってきそうだ。

「……お家だったのかな?」

そう言いながら剣を構える。少しのにらみ合いの時間があった後、獣の一匹が唸り声をあげて襲い掛かってくる。

「緋剣斬!」

そう叫ぶと、剣が赤く光って刀身の周りの空間が揺らいで見えるようになる。そのまま突っ込んでくる獣の口からスパっと両断する。少しだけ血が滴り落ちるが断面が焼けているのでそこまで多くの血は流れない。

「よしっ……!」

その勢いのまま二匹目の元に飛び上がり首と胴を泣き別れさせ、三匹目の頭を貫く。

三匹とも動かなくなったのを確認してから血を飛ばして剣をしまう。

「お見事です、ミア様」

「ありがと、ネイ。この獣は後どうしよっか」

「皮を持って帰れば買い取っていただけるでしょうが残念ながら解体ができないので……」

「じゃあ帰るしかないか」

「そうなります」

少しだけもったいないけどこんな重いもの持って帰るわけにもいかないし、仕方ないかと思って帰ろうとするとまたガサガサっと茂みが揺れる。

「まだいたの……!?」

剣を抜いて茂みの方に構える。しかし、茂みから出てきたのは荒々しい獣ではなくぼろきれの布に身を包んだ少女だった。金色の髪も汚れていて、こちらに気づくと殺気を感じたのかビクッとして立ちすくんでしまった。

「何でこんなところに女の子が……」

危険はないと思い剣をしまって少女に問いかける。

「こんなところで何をしているの?」

「あの……えと……」

敵意がないのを分かったのか、もじもじしつつも何かを言いたげにする。少女の次の言葉を待っていると急に大きな声で

「た、助けて!」

と言った。そのまま私に抱き着いてくる。

「何かあったの?」

その体勢のまま少女に問いかけると目の端に涙を浮かべながら答えてくれた。

「怖い人が……お姉ちゃんとはぐれたときに……」

どうやら人さらいのようだ。間近で見ると少女の耳は長い。いわゆる亜人種のようなもので珍しいから売ろうとしているのだろうか。

「わかったわ。私たちが貴女をカーンまで送り届けるから、いっしょに行こう?」

少女は頷く代わりに私のお腹に顔をおしつけながら強く抱き着いてくる。

「ミア様……」

「どうしたの?」

「どうやらお客様が……」

ネイの指さす先には下衆な笑いを浮かべた山賊のような人間が5人立っている。

「おいお嬢ちゃん、うちの商品返してくんねえかなぁ」

一人の男がにやけながらこちらへ一歩距離を詰めてくる。

「知らないけれど。この子は私の連れよ」

素知らぬ顔で答える。すると後ろの連中がひそひそ話している。

「おい、あの女クランの奴から聞いた場違い女じゃねえか?」

「よく見ると美人だし抱き合わせで売れそうだな……」

「まだ荷台に余りあったよな」

ネイは改めて長刀を構えて二人の前に立つ。

「おい、この女もついでに売るぞ」

五人がそれぞれの武器を構えてこちらに向かう。少女を自分の後ろに隠しつつ剣を抜く。

「やっちまえ!」

先頭二人の男が手斧と剣を振りかぶって襲ってくる。

手斧の方は剣で受けつつ弾き返して姿勢が崩れたところに肩から切りつける。男が痛みで手斧を手放したところで一突きしてからそのまま蹴って死体を吹き飛ばす。

剣の方はネイと数度打ち合った後相手の剣が折れてしまったのでそのまま切りつけて死体にしてしまう。

残りの三人が一旦距離を取ってにらみ合いの状態になったところでまた、別の人間が来る。

「おい、何してんだ!」

冒険者っぽい出で立ちをした男だ。後ろからさらに三人の仲間がやってくる。

一応冒険者ぽいだけで山賊の仲間かもしれないのでネイが山賊の方を、私が冒険者の方に刃を向ける。

「ここはずらかるしかねぇ……!」

形勢不利と見た山賊は足早に逃げ出す。

「貴方たちは……」

「冒険者だが、それはあんたらが?」

足元に転がっている山賊の死体を指さして言う。

「ええ。襲われたので仕方なく」

襲われたことを言ったところで空気のピリつきが和らいだ。

「なるほどな、怪我は……なさそうだな」

剣をしまって敵意がないことを示す。ネイは少女と手をつないではぐれないようにしてくれている。

「あのー、私たちこれからカーンに戻るんですけど、良ければ一緒にどうですか?」

男の後ろから後衛職であろう魔法使いのような服を着た女がひょっこり顔を出す。

「確かに。大勢でいた方がさっきみたいな賊に襲われても安全だしよ」

「……どうする?ネイ」

「ぜひご同行させていただきましょう。ミア様」

流石に少女を連れながら警戒しつつ帰るのは疲れそうだ。

「わかった。あなた方といっしょに行くことにするわ」

帰ろうと小道から少し広い道に出ると馬車が置いてある。どうやら先ほどの山賊が置いていってしまったようだ。

「これって……」

「忘れてったなら使わせてもらうか」

早速最初に声をかけてきた男、レスタと言うらしい、が馬車を操縦し始める。荷物はほとんど残ってなかったので残りの皆で荷台に座ることにする。

馬車に揺られながらまず、軽い自己紹介をし合った。相手パーティーのもう一人の男はカイと言うらしい。いっしょに行こうと誘ってくれた女はセレスタ。のこりの一人はセツと言うそうだ。彼らは4人で組んでいて、たまたま近くを通りかかったところ声が聞こえたので寄ってきたらしい。

「そういえば、貴女のお名前は?」

一旦彼らとの話がひと段落をしたところで助け出した少女に尋ねる。

「め……メーシャ……」

「メーシャちゃん、と言うのね。お姉ちゃんはカーンにいるの?」

「う、うん……多分おっきい町にいると思う」

「じゃあ、一緒に探してあげるね」

「ありがとう……おねえちゃん」


しばらく揺られているとセレスタが私たちのことを聞いてきた。

「ねぇねぇ、ミアさんはネイさんと二人で冒険してるの?」

「ええ。ほかの知り合いもいないので」

「二人じゃ大変じゃない?めったに三人より少ないパーティーなんて見たことないけど」

「うーん……最近冒険者になったばっかりでまだ難しい任務をしてないから大変さは感じてないかも」

「まぁ確かに山賊を怪我なしで二人も殺してたもんね。強いんだなぁ」

「装備も結構しっかりしてるし、メイドさん連れてるし貴族みたいだね」

「あはは……」

意外と鋭い。いや、流石にメイドを連れていたらそのように見えるか。

「みんな、もう街につくぞ」

段々日が沈んできたがそのまま街に入ってクランの建物まで連れてってもらう。

「乗せてくれてありがとう。これで失礼します」

つい癖で貴族時代の礼をしてしまうが気にせずクランの建物の中に入っていく。受付嬢に鉱石を渡して任務を達成したことを伝えていくらかのお金をもらう。

「じゃあ私たちの用が終わったしメーシャちゃんのお姉ちゃんを探そっか」

「そうですね、ミア様。メーシャさん、お姉さんはどんな方ですか?」

そう尋ねるとメーシャは少し考えてから

「金色の髪で……剣持ってる!」

「なるほどね。そっかぁ……」

少しだけ情報量が少なすぎる気もするが金髪で剣を持ってる女の人を探すことにした。メーシャを連れて歩いていることで姉なる人間に気づいてもらえるかもしれない。

「ネイ、それっぽい人いる?」

「それっぽい人は多くおりますが……決定的ではありませんね」

少し私より身長が高いネイでもいまいち見つけられていないようだ。

日もそろそろ落ちてきて辺りが人工的な光で明るくなり始める。昼と比べると圧倒的に暗くなる。こうなってくると酒場などに入らないと見つからないかもしれない。

「どうしましょうか、ミア様」

「うーん……酒場に妹探してる姉がいるとも思えないしなぁ……」

一瞬立ち止まった瞬間後ろから良く通る声が聞こえる。

「メーシャ!」


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