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密偵の報告

「これからどうしましょうか」

「帰りますか?」

「夕方ですしね……」

エルメイン様が帰られてから、そんなことを話していると窓をコンコンと叩く音が聞こえる。そちらを見るといつの間にか二戸が窓の外に。

「どうしたの?二戸」

「あ、ニノヘさんだ!」

「ごきげんよう、皆様。マスター、ご報告が」

しっかりと礼をするのを忘れず、開いた窓からそっと入ってくる。そして私に耳打ちをしてきた。

「報告?」

「はい。マスターのお母様に動きがありました」

「あの人に……?」

ここ最近全く姿を見なかったけどいったいどこで何をしていたのだろうか。きっとまたよからぬことを企んでいるに違いないけれど。監視をお願いしていた彼女たちが報告するべきと判断したのならきっと何かあったに違いない。

「入学式をご覧になった後、別の貴族様の所へいらっしゃったようです」

「……ふぅん?貴族のところに」

「傾向としてはマスターのご学友の対抗相手と目される方や、財力のある方にご挨拶をされているようです」

入学式に来ていたことすら気づかなかった。また外堀を埋めてレイに手を出そうというのだろう。二度とレイと離れるなんて嫌だ。

「……わかった。また監視をよろしくって伝えて置いて」

「かしこまりました」

そうして、いつの間にか二戸は窓の外からどこかへ行ってしまった。ちゃんと窓を閉めていくなんて律儀な子だ。


「姉様、ニノヘさんどうかされたんですか?」

彼女がいなくなったところで、レイが私の顔を少し心配そうに覗きこんでくる。かわいい妹にはこのことを伝えておくべきだろうか……。いや、下手に隠す必要もないしその方が剣呑かも知れない。

「実はね……」

彼女にだけ聞こえるように耳打ちをしてさっき伝えられたことを話す。すると、みるみるうちにレイの顔が不機嫌になっていく。

「……母が来てたんですね。また姉様にいじわるしに来たんでしょうか」

「そう決めつけるのも良くないけど……多分よからぬことを考えているんでしょうね。はぁ……」

思わずため息が漏れてしまう。

「私が母と話を付けてきましょうか?もう近寄らないでほしいと」

「そんなの駄目よ!また攫われちゃうかもしれないし……」

大きい声が出てしまった。びっくりしたセイラとネイがこっちを見ている。

「どうしたの?二人とも」

「あ、ううん。何でもないわ。ともかくレイ、危ないことはしちゃだめだからね」

「……わかりました。姉様」

ちゃんとわかってくれただろうか。本当に危ないことをしなければいいけれど。オーバにも一言伝えておくべきかもしれない。

「ミア様、おかえりになりますか?」

「そうね、帰りましょう」

「あら?ミア、もう帰っちゃうの?」

ちょうど会話を聞いていたエイリーン達が声をかけてくる。

「ええ。もうあんまり用事もないかと思うし」

「じゃあ、私達も帰ろうかな」


「それにしてもエイリーンのお母様は何をくださるのかしらね」

懐の深いことに皆の分を用意してくれるというのだが、いったい何を用意してくれてるのだろうか。服?アクセサリー?それとも実用品?

「そうねぇ……私が友達を連れてくることそんなになかったからあんまり予想がつかないわねぇ」

「仕立てる、と仰っていましたし服か何かじゃないんですの?」

ロベリアがそれっぽい予想を立てる。

「皆で着られるもの……おそろいの寝間着とかかしら」

「それはつまりミアの部屋で皆で寝ていいってこと?」

「……別にいいけど、狭くない?」

いくら広い部屋を使えるとは言えこの人数が止まるにはベッドが足りない気がする。

「んー。私達がベッド置いておけば良いんじゃない?」

「皆で一緒に寝るのも楽しそうですわね」

ロベリアもエイリーンもだいぶ乗り気のようだ。寝間着がもらえると決まったわけでもないのに……。

「まぁ、一度くらいはそんなパーティーがあってもいいかも」

「じゃあできるだけ早く家具を送るわね!」

「お手柔らかにね……?」



彼女たちと別れて寮に戻る。まだ家に帰って用事があるみたいで部屋に来れないのを残念がっていた。

「うーん。8人で快適に過ごせるかしら……」

まだ広いリビングを眺めながらつぶやく。

「大丈夫じゃない?ミア。はい、お茶」

セイラがネイの淹れたお茶を持ってきてくれながらそんなことを言う。

「ありがと」

「少なくとも5人じゃ広すぎるくらいだし」

「それはそうねぇ」

まぁ今すぐに彼女たちが来るわけでもないし、おいおい考えていけばいいか。

「ミア様?制服、掛けておきますから脱いでください」

「あ、ごめん」


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