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友達の母親

「いらっしゃいな、待ってましたよ」

そこには、一国の妃らしい品のある装束に身を包んだ優しそうな女性がいた。ふわっと薔薇のような匂いが漂ってくる。少しの間ぼーっとしてしまっていたら、お付きの人達が一礼と同時に私達と入れ替わりで部屋から出ていった。

「お母様、時間作ってくださってありがとう!」

「いいのよ、貴女のお友達に興味もあったし……貴女の顔も見たかったし、ね」

エイリーンが彼女の母の元にすすすっと寄って行ったところで、二人が本当に親子なんだなということが見て分かった。二人とも本当に綺麗なワインレッドみのある髪を肩下まで伸ばしている。違いがあるとしたら髪の一部を結っているかどうかだろうか。本当に仲のいい親子という感じがして少しうらやましい。

「もう……あんまり時間何って経ってないでしょ?ほとんど変わらないわよ、お母様」

「そう?私の目には国を出たときよりも成長した姿が見えるわ。頑張ってるのね」

「母様ったら……」

頭を撫でられて、ちょっと恥ずかしそうにするエイリーンが新鮮に映る。あんなかわいい顔もできるなんて。ギャップでちょっとだけグッときてしまった。


「それで、この娘達が?皆、制服が似合ってるわね」

こちらを見る時の彼女の澄んだスカイブルーの目がキランと光った気がした。

「ええ、そうよ!これからの学友であり、私の大事なお友達!」

「ヴァーミリアン・ロベリアと申します」

「ラスティナ・ミアリーンと、妹のレイリーンです」

ロベリアに最初を譲って挨拶をする。私達の仲であまり気にすることでもないけれど、やっぱり格が上の家の人間が最初に挨拶するべきだとは思われているだろうし。

「ふぅん……貴女が……。私はエイリーンの母、ヴィスカリア・エルメインです。いつも娘から話は聞いていますよ」

ロベリアの方を一瞥したかと思うと、柔らかな声で自己紹介をしてくださった。

「あと、お付きのレディシア、ネイ、オーバ、セイラよ!」

流れるようにエイリーンが彼女たちの紹介をしてくれる。セイラだけワンテンポ遅れて礼をする。

「貴女達が……。なるほど、良い友人を持ったようね」

「最高の友人よ!」

「娘の話によると皆で色々なところに行ったとか。従者も含めて皆仲良く、とても素晴らしいですね」

「特にミアとネイは小さいころに出会ってたって言うんだから驚いたの、お母様!」

「小さいころ……あぁ、色々な街に遊びに行っていたものね、貴女は」

「そうそう。あの時にばったりと会ったのよね」

自分のことを話していると思うとほんの少し体が緊張する。

「貴女……不思議な感じがするわね」

ジーっと見られていて顔を上げられないが上から下まで見透かされている気がした。おそるおそる言葉を紡ぐ。

「ふ、不思議……ですか?」

「そう、ほんのりと私達と違う香りがするわ。本当に不思議な娘。妹さんと似ているようでどこか違う……」

「確かにミアはちょっと不思議な娘かも……」

そんなこと思われるほど不思議な行動をした覚えはないのだが。

「まぁお母様は勘が鋭いから何か感じてしまうのかも」

「……悪いことにはならないでしょうし。二人とも、これからも娘をよろしくね」

「は、はい」

「はい」

一瞬私が別のところから来たのを見抜かれたのかと思ったが流石にそんなことはなかったみたいだ。この母娘、本当に勘が鋭い。気を付けないとばれてしまうかもしれない。バレたところでどうというわけではないけれど。


「それに、あのヴァーミリオンのご令嬢もお友達にいるし、ちょっと不思議な交友関係ねぇ」

「いつもエイリーンさんには良くしていただいてます」

「これからも仲良くしてあげてくださいね、家としても、個人としても」

「はい」


「そうだ、せっかく会えたのですし……入学祝も兼ねて貴女達に何かプレゼントしましょうか」

「えっ!?いいの?お母様」

「ええ。初めて連れてきてくれたお友達ですもの、素敵なプレゼントを送るわ」

「あ、ありがとうございます」

「皆でお揃いにしましょうか、うん。8人分なら大丈夫」

「8人……?私共にも……!?よろしいのですか?」

レディシアとネイ、オーバが驚いている。無理もない、普通は他人の従者にプレゼントをするなんてありえない。

「だって、娘の友達なんですもの。従者だからと言ってプレゼントしないんじゃ第一不公平っでしょう?」

「な、なるほど……ありがとうございます」

「そうね……少し仕立てる必要があるでしょうから時間はかかると思いますが近々送らせていただきます」

「ありがとう!お母様!」

「学院での生活、頑張るのよ?」

「はい!」


楽しい時間はあっという間に過ぎた。他にもいろいろ話した気はするが緊張で変なことを口走っていなかっただろうか不安になる。

「と、もうこんな時間。私もそろそろ戻らねば」

「あら、お母様もうおかえりになるの?」

「ええ。明日も少し、やることがあるのよ」

「じゃあまた、おやすみの時に会いに来るね」

「皆を連れていらっしゃいな。それじゃあまたね」

そう言って、ドレス姿のエルメイン様は部屋から出られた。


「ふぅ……緊張した」

「あら、ミアがそんなに緊張するなんて珍しいですわね」

エイリーンの母親がいなくなったところでふぅと一息つく。本当に緊張した。

「私だって緊張くらいするわよ。あんなに身分の高い人と会うことなんて早々ないんだから」

「それにしても、私達にまでプレゼントをくださるなんて懐の深いお方ですね」

「まぁ……母様に友達を紹介したことなかったし。こんなものかも?」

「私達の母とは大違いですね、姉様」

「……ええ、そうね」


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