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入学式

入学式は厳かに始まった。そこまで儀式ばっている訳ではないがある程度のプログラムがあるみたい。最初に校長からの祝辞のようなものがあるらしい。ストリーツァ様がオレンジ色の煌めく髪をなびかせながら壇上に上がって行く。素敵なドレスをお召しで、傍らの剣も相まってとても美しい。

「さて、ごきげんよう皆さん。まずはこの学院に入学おめでとう。校長のストリーツァです」

「今日この場に集まった皆さんは、恐らく身分の高低関係なく何らかの形でこれからのこの国や帝国の将来を担う人材であることでしょう。この学院ではあなた方がその役目を全うできるようにあらゆることを教えます。鍛えます。そのために我々は全力を尽くすので困ったことがあったら何でも聞いてください」

「もちろん先輩に聞くことも良いと思います。皆さんがこれから受ける試験を通った人たちです。学べることがたくさんあると思います。是非たくさん関わってみてくださいね」

「とは言っても勉学はもちろん、学生生活を楽しむことも大事です。学友同士でいろいろなところに行ってみましょう。切磋琢磨しましょう。いつか必ずそれはあなたたちの身を助けるはずです。それにしっかりと息抜きをしなければいつか痛い目を見ますよ。切り替えをしっかりできるようになりましょう」

要点を押さえるとこんなことを仰っていた。お世話になっている方の声だと耳にすんなりと入ってきた。相変わらずいいことを仰る。本当にこの方が校長でいらっしゃる学校に入学できてよかった。

次に、生徒会長による在校生代表のあいさつだった。先ほどストリーツァ様が歩いていたところを、薄い青色の髪がなびいて上がって行く。

「新入生の皆さん、こんにちは。生徒会長のユリアです」

「まずは入学おめでとうございます。新しい制服に袖を通した感覚はいかがですか?緊張していますか?校長がありがたい話をしてくださったので、私はちょっと短めにしようかと思いますね」

「私達在校生は皆さん新入生を歓迎いたします。学生生活のすべてにおいて困ったことがあったらお手伝いしますね。是非、相談してみてください」

「入学をすると学内行事や学外行事で忙しいでしょうが、学生の本分を忘れることなく、しかし充実した楽しい学園生活を送られることをお祈りしています。一緒に頑張りましょうね」

と、だいたいこんなことを言っていた。なんだかいまいちつかみどころのなさそうな方に感じる。生徒会に入ることはそんなに考えていないがいつかご挨拶する機会がありそうだ。その時には飲まれないように気合いを入れて置かないと。

そして最後に新入生からの挨拶があった。代表は、パーティーの時ロベリア様と一緒にいたあの王太子だ。まぁきっと当り障りのないことを言うのだろう。

「先生、先輩方、素敵なご挨拶ありがとうございました。入学の緊張がありましたがだいぶそれも解けたように感じます」

「今年は、幅広い身分にたくさんの立場の新入生がいます。様々な考え方もあるでしょうが皆で協力し合ってよりよい学園生活を送っていきたいと思っています」

「いつかこの国を背負っていくであろう我々が正しく成長できるように、私達も努力をするのでよろしくお願いします」

だいたいこんなことを言っていた気がする。その後は事務連絡や学院での注意事項などが伝えられた。そして簡単な直近の予定も。

そうして入学式のメインの式典は幕を閉じた。ただ座っているだけだったので楽で良かった。

「終わりましたね、姉様」

「そうね。あっという間だったわ」

「こういう式典は短い方がいいのよ」

終わってから、すぐに周りがざわつきだしたと思ったらレイたちが話しかけてきた。

「皆話が短くて良かったわ」

「ああいうところで長く話したがるのは老人位のもんじゃないの?」

「それはそうかも」

「それで、この後どうするんですの?」

「皆に予定がなければ……私の母様に皆を紹介したいかも」

「私達は暇よ。特に会うべき人もいないし」

「私も……特に合わなければいけない人はいないわね」

どうやら三人とも暇らしい。

「じゃあ、皆で行きましょうか!」

エイリーンの元気な合図で予定が決まった。


「それで、エイリーンのお母様はどちらにいらっしゃるの?」

「今、部下に行かせて会えるような場所を作っているわ」

「えっ、急に言ったの!?」

「んー……一応紹介するとは言ったし多分大丈夫じゃないかしら」

「本当に……?大丈夫よね……」

早速幸先が不安だ。まさか当日にいきなりアポを取るなんて思っていなかった。

「いきなり不安ですわね」

「大丈夫大丈夫安心してって~!」

「エイリーン様……」

そんな楽観的な彼女に、従者が何かを伝えに戻ってくる。

「……わかったわ!今からそっちへ行くと伝えてちょうだい」

「かしこまりました」

足早に従者がいなくなる。

「母様が学院の応接室を一つ借りたらしいからそこで会えることになったわ!」

「わ、わかった」

「……お任せしますわ」

「よし!じゃあいこっか~!」

相変わらず元気な彼女を先頭に会場を出て、応接室へと向かう。


「お待ちしていました、エイリーン様」

さっきの従者とは違う人が扉の前で待機していた。ちょっと私達より年上で、ネイよりもちょっと年上に見える。

「あら、久しぶりね。ご苦労様」

「お母様はこちらの部屋の中にいらっしゃいます。……そちらはお連れ様ですか?」

「ええ、そうよ。私の友達を紹介しようと思ってね」

「なるほど、きっとお母様も喜ばれると思われますよ。奥様!皆様がご到着しました」

「入ってちょうだい」

従者の声に透き通るような声が帰ってきた。

「では、ごゆっくり」

そう言って従者が扉を開けた。深呼吸を一つ。無駄に緊張しすぎないようにしよう。あくまで友人の母親に会うだけなのだ。


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