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賑やかなお引越し

「ありがとう。甘えさせてもらうわね」

「かしこまりました。お気をつけてお帰り下さいませ」

ネイの肩を借りながらパーティー会場を後にする。結局エイリーンもついてきてしまった。彼女に挨拶したい人はもっといただろうに。

「姉様、体調は大丈夫ですか?」

帰り際、レイが私の顔を覗いて聞いてくる。

「ええ。そんなにひどくはないから安心して」

「なら良いですけど……」

「ミア!馬車の用意ができたわよ~!」

エイリーンが部下に用意させた馬車が既にスタンバイしていた。

「ありがとう。世話をかけるわね……」

「良いのよ。私も一旦貴女のところに行こうと思うし」

馬車に揺られながら仮の住まいへ戻る。すっかり日は落ちて夜市のようなものが立っている。

「こんな夜にも賑やかでいいわね。ヴェルーナは」

「いつかこのお店をまわってみたいわね」

「学院に入ったら街に出て遊べるんじゃないの?」

セイラがニヤッとしてそう尋ねてくる。きっとついてくる気満々だ。

「期待してるところ悪いけれど寮が厳しかったら多分夜には出られないと思うわよ」

「えぇ~!?」

「でも、こっそり出るのは大丈夫よねぇ~」

「ちょっとエイリーン?怒られるのは嫌よ」

「大丈夫よ、任せなさい。何回城から抜け出してると思ってるのよ」

自信満々にそんなことを言う。彼女の部下はとんでもない苦労をしているのだろうと思わず同情をしてしまう。

「姉様、あんまり危険なことはしないで下さいね」

「分かってるわよ。いたずら皇女に乗せられないようにするわ」

「ちょっと!?誰がいたずら皇女よ!」

そんなことを話していたらいつの間にか部屋についていた。ドレスを脱がせてもらってからそのままベッドに横になった。

「もう寝間着を着るのもめんどくさいわね……」

「ミア様、お風邪を召しますからしっかり着てくださいませ」

ちょっと怒った風にネイが言ってくる。

「私が一緒に寝て温めれば……」

「レイ様。ベッドが狭くなってしまいます」

ちょっと下心を見せたレイはオーバにたしなめられている。諦めてネイに服を着せてもらう。

「私もいいところで帰ろうかしら。ミアも休むみたいだし」

「ごめん。早く体調治すから……」

「いいのよ。ゆっくり休んで入学に備えなさい」

ニッコリと笑ってそう言った彼女を見ていたら段々と眠くなってきた。それを見計らったようにネイが明かりを消して皆を寝室から出す。



パーティーが終わってから二日ほど経った日。

「ミア様、レイ様。鍵を貰ってきました」

ネイとオーバが学院から戻ってきた。

「これで引っ越せますね」

「と言っても私達の荷物そんなにないけれど」

私たち二人の荷物を合わせても恐らく普通の独り身のサラリーマンより荷物が少なそうだ。

「実家に全部置いてきちゃいましたしね……」

「いつか取りに帰らないととは思うけど……いつ行こうかしらね」

「あの母ですもんね」

「むしろイオナのところにおいて置けるからこれから荷物が増えても大丈夫そうね」

あの巨大な艦にはいくらでも置いておけそうだ。あんまり置きすぎるとイオナに怒られそうではあるけれど、まぁ許してくれるだろう。

「この部屋を貸してくれて本当にありがとう、ロベリア。助かったわ」

「いいんですのよ。どうせ私の裁量で使える場所ですし、しばらく使わないから貴女達が街に出て何かしたいときに使って。鍵も預けておくわ」

「いいの……?ありがとう!」

手をぎゅっと握って感謝をつたえる。

「せっかく引越しの手伝いに来たのにただ一緒に行くだけになっちゃったわね」

いつものエイリーンも一緒に来ている。

「賑やかでいいじゃない」

「そうそう!友達は多い方がいいもんね!」

「そ、そうね」

ちょっと刺さった。昔の私に聞かせたら否定しそうなことだ。

「そろそろ行きましょうか」

「はーい!」


そうして借りた馬車でぞろぞろと寮へ向かう。私が行くのはエルズライト寮で、主に貴族の面々が住む寮だ。貴族と言ってもロベリアのような上流貴族は学院の近くに家があるのでほとんど使用することはなく、主にいるのは中流程度の貴族の子女だ。

「だいぶ大きいわね」

「手続きはこちらで済ませておいたので部屋に入るだけです、ミア様」

そう言って鍵を手渡してくれる。

「えーっと……」

「こちらの部屋ですよ」

鍵を開けると既に先客がいた。

「お待ちしておりました。マスター」

「お疲れ様、二戸」

「お掃除は抜かりなく済んでおります」

案内されて一通り部屋の中を見て回る。だいぶ広い。前の世界で言う3LDK位はあるだろうか。二人+従者も含めると確かにちょうどいいくらいか。

「寮ってこんなに綺麗で広いのね」

「少しだけ、口添えを頂いたから……ね?」

「私の口添えなんてなくてもこの部屋はとれたと思うわよ」

「ちょっと不安だったから……ありがとうね」

「別にこのくらい構いませんわ」

ちょっと照れくさそうにしてそっぽを向くロベリアがいつにも増してかわいい。

「じゃあ、部屋割でも決めましょうか」


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