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久しぶりの心休まる時間

「無事に入れるかしら……」

母にそんな権力はないはずなのだけれど何もかもに警戒をしてしまう。

「私に任せておきなさい」

そう言ったのはロベリア様だった。馬車から顔を出して警衛と何かを話している。

「……くださる?」

「……すが、規則……」

「これを……に見せ……」

「これは……!」

外が少しだけ騒がしくなる。いったい彼女はどんな魔法を使ったのだろうか。


「これを見せたら一発だったわ」

顔を見せてしばらくしたらまた馬車が動き出した。それと同時に家紋の入ったお守りみたいなものを自慢げに見せてくれる。

「流石……ていうかこれはどこへ向かってるの?私の家?」

あの家はもしかしたら母にばれているかもしれないからちょっと戻るのが怖い。

「あー……あのお家怪しい奴らに襲撃されてボロボロになっちゃったからレイのいるところに行く予定よ」

「そんなことに……」

「一応イオナさんが監視要員は派遣しているみたいだから何かあったら教えてくれるはずですわ」

「いやぁ、暇だしミアのところにでも行ってお茶でもしようかと思ったら血なまぐさい人間がいるんだものびっくりしちゃったわよ!」

「まぁほとんど貴女が倒しましたけれどね……その大立ち回りのせいで部屋がぼろぼろになった側面も……」

「ま、まぁ細かいことはいいじゃない!」

いつの間にそんな大変なことになっていたとは。部屋自体は最悪修理すればどうにかなるのでどうでもいいが既に母にばれてしまっていたなんて。父の紹介だと知られないようにしなければ。

「そうなると、出来れば早くに寮に入りたいわね……流石に学院にまでは手を出して来づらいでしょうし」

「大丈夫よ、安心しなさい。あなた達が早く入れるように私も協力するから」

「本当にありがとうございます、ロベリア様……」

「わ、私も協力するよ!」

「私もよ!頼ってちょうだい!」

「二人もありがとう。頼らせてもらうわ」

ロベリア様には本当に世話になりっぱなしだ。と、同時にセイラとエイリーンも張り合ってきてちょっとかわいいと思ってしまった。きっと二人にもまた頼ることはあるだろう。


そんな話をしながらじゃれていたら馬車が止まった。

「お疲れさまでした、皆様」

扉を開いてネイが私達を降ろしてくれる。が、私の時だけちょっと待つようにジェスチャーをしてきた。

「……?どうしたの?ネイ」

「考えすぎかとは思いますが一応これをお召しになってください」

そう言って私にフードのようなものを被せてくる。

「では、失礼します」

「え?」

ふわっと体が浮いた。そのまま馬車から降りていく。急な浮遊感に思わず彼女の上半身に抱きついてしまった。ちょうど顔の目の前に彼女の濃紺の髪が当たって鼻をくすぐってくる。これではいわゆるお姫様抱っこではないか。

「ちょ、ちょっと……!?」

「体調の悪い主を歩かせるわけにはいきませんから」

「もう……」

建物の中に入ったら降ろしてくれるのかと思いきやそのままサクサクと階段を上がっていく。

「ちょっと!?もうさすがにいいわよ……!このくらいの広さならゆっくり上がれるわ……!」

少しだけ降ろしてくれるように暴れてみるがネイのホールドは少しもびくともしないし何ならそのまま階段を上がって行っている。

「だめですよ、ミア様。あなたの帰りをずーっと心待ちにしている方がいるんですから急がなきゃ」

「でもほら、重いでしょ……!」

「ミア様は重くないですよ」

そうこうしているうちにそっと降ろされた。ただ、すぐに離さずにゆっくりと降ろしてくれた。

「着きましたよ、ミア様」

「あ、ありがとう……」

「そうそう、そこの部屋ですわね」

ロベリア様が私の目の前の扉を指さす。

「開けても……」

「もちろん大丈夫ですわ」

ガチャっと音を立てつつ扉を押すと窓際の椅子で紅茶を傾けているレイがいた。日光に照らされた黒髪が美しい。

「ね……姉様!?」

「レイ……無事でよかった!」

「姉様こそ!」

慌てて私に近づいてこようとしたところで急にブレーキをかける。

「レイ……?」

「だ、だめです姉様!今近づいたらあれが……!」

そのまま私から距離を取ろうとする。

「あ、ああ。大丈夫、きちんと外してもらったから」

フードを外して首元を見せる。しっかり白い肌が見えていてあの母につけられた嫌な物の跡はない。厳密に言うとうっすら火傷の跡が残っているが。

「じゃあ……近づいても大丈夫ですか……?」

「ええ、いらっしゃ」

「姉様ぁーーーーーー!」

私が言い終えるのを待つこともなく懐に衝撃が走った。そのまま後ろのベッドにぼふっと倒れ込む。ネイは華麗にかわして廊下に立っている。

「ロベリア様が、ごゆっくり。だそうです」

「姉様をしっかり補給しますね!」

「補給って……レイったら」

私の胸元で深呼吸している可愛い妹の頭を撫でてあげる。それだけで嬉しそうにしてくれる彼女が私は大好きだ。

「本当にかわいい妹だわ……」

「姉様も素敵な姉様ですよ!」

「……待たせてごめんね」

「大丈夫です!パーティーはまだ終わってませんから!」

輝くような笑顔でそう言ってくれる。どうやら私と一緒に出席するのをよほど楽しみにしてくれたみたいだ。私も嬉しい。

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